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お金の正体

 「単なる紙切れがなぜお金として通用するのか?」、「お金はこの先どんなものになるのか?」、「そもそも人間社会にお金が必要なのか?」、そんなことを考えました。
 お金に振り回されないために、お金と上手に付き合うために、ときにはお金についてじっくり考えてみるのもいいかもしれません。

お金の条件

 単なる紙切れが、なぜお金として通用するのか?

「それを『お金だ』とみんなが思っている」とみんなが思っているから。

 「誰かがそれを『お金だ』と思っている」だけではお金は成り立たない。たとえば、オレがそこに落ちている葉っぱを『お金だ』と思っていても、他の人がそれをお金として受け取ってくれなければ、オレはそのうちそれがお金でないことに気づいてしまう。だからそれがお金として通用するためには、まず「みんながそれを『お金だ』と思う」ことが必要条件である。
 けれども、それは十分条件ではない。つまり「みんながそれを『お金だ』と思う」だけでは、まだ足りない。それに加えて「「他の人がそれを『お金だ』と思って受け取ってくれる」とみんなが思う」ことが必要だ。というのは、「みんなが自分ではそれを『お金だ』と思っている」けれども「『他の人はそれをお金だと思っていない』とみんなが思っている」ということはありうることなのである。
 ところが、自分がそれを『お金だ』と思っていても、『相手もそれをお金と思っている』と思えなければ、取引は成立しない。つまり、お金として機能しない。だから「「それを『お金だ』とみんなが思っている」とみんなが思う」ことが必要条件なのである。
 ところで、自分はそれをお金だと思っていないが「自分以外のみんながそれを『お金だ』と思っている」とみんなが思っているときはどうかというと、この場合もやっぱりお金は成り立たない。その状況下では誰かが「それはお金ではない」と言った途端に、それはお金でなくなる。「自分以外のみんながそれを『お金だ』と思っている」という思いが間違っていたことをみんなが知ることになるからである。裸の王様と同じ状況である。だから「「それを『お金だ』とみんなが思っている」とみんなが思っている」というときの「みんな」は「自分を含むみんな」でなければならない。
 そして「それを『お金だ』とみんなが思っている」とみんなが思っていれば、お金は成り立つ。この条件下では、その紙切れを売り手が受け取ってくれると思うから買い手はその紙切れを差し出すのだし、また他の人がそれを受け取ると思うから売り手はその紙切れを受け取るのである。
 お金として機能するにはそれで十分だ。すなわち「「それを『お金だ』とみんなが思っている」とみんなが思っている」ことは、お金が成り立つための十分条件である。
 以上から、

「それを『お金だ』とみんなが思っている」とみんなが思っていること。

これがお金が成り立つための必要十分条件である。

昔のお金と今のお金、そして未来のお金

 昔のお金は「物々交換の仲立ち」だった。山男が芋を、海男が魚を、田男が米を持っていて、他の物と交換したいと考えたとしよう。ところがお金がないと、うまくいかない場合がある。

《ケース1》
山男が魚を、海男が米を、田男が芋を欲しいと思った場合。
お金がないと、3人が同じ場所に居合わせない限り、取引が成立しない。
お金があれば「魚⇔お金 , 米⇔お金 , 芋⇔お金」、これで取引が成立する。

《ケース2》
山男が魚1匹を、海男が芋1個を欲しいと思っているが、芋3個と魚2匹が等価である場合。
二人が「そんなにたくさんは食えんなぁ」と考えれば、取引が成立しない。
お金があれば「魚1匹 ⇔(芋1個+差額のお金)」で取引が成立する。

 かくもお金は便利なものである。だからお金が流通するようになった。これが「昔のお金」である。一時的にお金を保管することはあっても、それは 最終的には必ず物と交換された。

 さて、「今のお金」には、それをはるかに超えた意味合いがある。もちろん物々交換の仲立ちとしての意味合いも残っているが、それは貧乏人がはした金を使う場合の話である。
 金持ちにとって、あるいは企業にとって、お金は物を交換するためにあるのではない。彼らにとって、お金は「物を生み出すため」にあるのだ。つまり、資本としてのお金である。
 今のお金は物を生み、物はお金を生む。そうやって自己増殖する。
 そんなことは昔のお金にはできなかった。昔は「自然が物を作ってくれた」のである。昔の人々はお金を媒介として、それを交換したにすぎない。昔のお金は、決して物を作ったりはしなかった。
 ところが今は、お金(=資本)が物を生み出しながら、自己増殖するのである。でも、なぜなんだろう? 無から有が生じることはない。たかが紙切れが、あるいは金属の欠片が、なぜ物を生み出すのか?
 もちろんそこにはカラクリがある。そのカラクリとは「資源とエネルギーの消費」である。化石燃料を大量に消費し、物を生産して、物を消費する。これがお金と物の自己増殖のメカニズムである。
 そして、これが資本主義経済の本性であり、前提であり、そして同時に限界でもある。
 未来に思いを馳せてみよう。未来のお金は、どんな姿をしているんだろう? それは、何のために存在するんだろう?

アンパンマン・ワールドの経済学

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お金の相対性理論
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