あったことのないお友達
3月に入ると、あったことのない、大切な友達を思い出します。
なおこの代筆、と言うWindows95とか98でやっていたオンラインで誰かに世界中の旅先から誰か知らない人から旅の手紙が届いたり、自分も送るアプリ?があってそこでお友達になった方が何人かいました。
その中の一人の女性と仲良くなりました。Cさん。
とても穏やかな文章を書く方で、地方に住まれているのにスタイリッシュで丁寧な印象がある方でした。
世界に飛び出たいけれど、出られないでいる私たちは、オンラインの上の世界で旅をして、お互いに手紙を送り合いました。
その後、直接メールを送る中になりましたが内容はそう変わらず、あまり突っ込んだプライベートな話をするわけでもなく、季節のことや地域のこと、ちょっとした悩みや思うことを綴りあっていました。男女を含め何人もと直子の代筆ではやり取りをしたのですが、Cさんとは妙に気が合うというか、相性が良かったのでしょうね。とてもいい距離感で相手を思いやり、自分のことを話せる相手だったなぁと思います。
昔楽しんだ文通の様にドキドキしながら彼女のメールを開けたものです。
彼女の住む土地の名前を聞いても、足を運んだこともなく「かもめのたまご」っていうお菓子があるのよって言って送ってくださったことがありました。今でもかもめのたまごというお菓子を見かけると彼女を思い出します。
私は当時結婚して定時のお仕事をしていて、なんだか決まりきった安定している感じが楽な様な、馴染まないような感じがしてどうやってこれから生きていけばいいのかなぁと思っていた頃の形にもならない不安感から仕事を辞めて通訳翻訳の仕事をしようと転換する時期でした。
仕事を辞めることになったりして、お互い自分のことに忙しくなり、いつしか音信が消えてしまって数年、あの日が来ました。3.11です。
震災時からずっと震災地域にお住まいだった彼女のことがずっと気がかりでした。当時は日本にいたので、通訳ボランティアや翻訳ボランティアをいくつもしたのも彼女の存在が震災をすごく身近にしてくれたことが根底にあったのではないかと思います。
どうにか手を尽くして探してみましたが、彼女の安否などはわからないまま数年が過ぎました。
今から9年前のことです。たまたま日本に帰国していて、テレビを
つけたところ、この時期ですので、震災の思い出を紹介する特集番組を放送していました。
その中のストーリーのひとつに、遺体は見つからないけれど津波で流されていた携帯が偶然に見つかった。いろいろ手を尽くしてみると、幸運なことに電源が入り、ご両親への彼女へのメッセージが伝わった、というお話が紹介されていました。
その時、実際の携帯電話が紹介されていたのですが、そこに出ていたメッセージに書かれていた送信者の名前が私が文通していた彼女のものでした。
数年の時を超えて、彼女があの時の津波で一瞬のうちに海に飲み込まれたことを知りました。
不思議なことに、そのテレビを見る数ヶ月前から私は周りの人に彼女のことが気になるとずっと話していたそうです。もしかすると、気にかけていると知った彼女が私にも知らせてくれたのかもしれません。
知人のチャネラーの人が、この一連の話を聞いて、彼女とコンタクトを取ってくれたら苦しむことなく、とても穏やかな気持ち感謝の気持ちを持って今生を終えたということを教えてくれました。
会ったこともない私にまで自分の今生での不在を知らせてくれる様に、魂の存在になっても思いやりがある彼女らしさには本当にありがたく思いました。
彼女がこの世にいないと知ってからは、桃が咲く頃になると彼女との不思議なご縁と私に彼女の安否を知らせてくれた優しさを思い出して、数年のやり取りが懐かしくなります。
お目にかかったこともない方ですが、今もとても近しく感じていて、彼女が幸せに元気にいてくれている様にと祈っています。
次はどこかの世界で会えればいいなぁと思います。
きっといいお友達になれると思います。今生以上に。
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