芸術性って?

SNSや掲示板などで、芸術作品の話題になると必ず、「作品に良い悪いはない。受け取る側の好みの問題」という論調を目にします。

僕はこの考えの過激派です。最近見ない禿同ってやつです。

極論、ベートーベンの音楽も、高校生バンドの音楽も、本質的な価値は同じだと思っています。もちろんこれは、細かい分野に分ければ価値判断はできると思います。音楽シーンに与えた影響や知名度は、曖昧ですが差は出せます。

現在では「その作品がどれだけのお金を生んだか」で、主にその価値を判断されることが多い気がします。無名バンドより、ベートーベンの方が大量のお金を生むのは明らかなので、「商業的に見て」ベートーベンの音楽の方が価値はあります。

一番厄介なのが「芸術性」です。何故か多くの人は、芸術性が高い作品が本質的に価値のある作品だと思っている気がします。

ですが、これは測るのがなかなか難しいです。細かく見れば、斬新さやメッセージ性など、何となく優劣をつけられそうですが、これも曖昧でなによりそれが芸術性の全てかと言われればそうも思えません。

また、芸術性を「どれだけ人の心を揺さぶるか」と定義する人も多いです。ですがこれもまた、個人の好みが介入してきます。現代アートを見て感銘を受ける人もいれば、昼ドラを見て涙を流す人もいます。

こうなると、芸術性なんてものは虚構で、好み以外で作品を語れないという考えに至ります。僕は半分同意です。

最初に言ったように、芸術において根本的な価値判断はできないと思っていますし、その人個人の心を揺さぶったかという事実が重視されるべきだと思います。つまり、その人がその作品を好きだというのなら、それを否定する筋合いは誰にもないということです。

ですが最近になって、その時代、その瞬間の「芸術性」というものはあっても良いんじゃないかと思うようになりました。

青春時代にどハマりしたインディーズバンド。結局売れずに解散してしまったかもしれませんが、その時その少年は確かに芸術性を感じていたはずです。

空前の大ヒットを記録し、みんなが大好きな映画。評価が高いから見てみたら、全然面白くない。みんなが感動していても自分だけどこか冷めていた、なんて体験をした人も多いかもしれません。

あくまでも僕たちは現代の地球に生きています。偉大な芸術家も、僕のようなつまらない物書きも、発表したものは僕らが生きるこの場所で、多くの人から評価されます。

いわゆる「芸術性」は定義できるものではなく、人によって変わってくるものかもしれません。大ヒット作品や凄い賞を取った作品も、その人にとって「良い作品」とは限らないのです。

まとめると、芸術性とはある個人がその瞬間に感じるものであり、作品そのものに対して使う批評の道具ではないと思うのです。好みは人それぞれですが、「芸術性なんて虚構だ」という考え方も、少し寂しいかなと思ってしまいます。

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