ジブリ「君たちはどう生きるか」について

最初に、この作品を見て即座に完璧には解釈できないと感じた。
僕の生きる人生の中にまだわからないことがあると与えてくれたことによって、未知な自分自身の余地を考えさせてくれる提案の1つに出会えて本当に良かったと思う。

冒頭のぬるぬる動くアニメーション。
ジブリはぬるぬる動くには動くのはわかっていたけど、え!こんなにぬるぬる動くことある?と思うぐらい人間がまるで軟体生物になったかのように異常にぬるぬるだった。
冒頭実際にああいう状況に至った時に、気持ちが先に動いた時にぬるぬる動き人間になるのかもしれない。その想像は経験が無いから現実に落とし込めない。僕が生きている世の中は未だ平和の範疇にいるのだと思う。

ジブリ映画は本業を声優とする人を採用しないことがほとんどで、本作はキムタクがどこかおっちょこちょいなお父さんの役をしていることに好感が湧いた。キムタク主演の実写でも、頼りがいの無いキムタクを見たいほど、キムタクに未来を感じた。何ならダメ人間のキムタクを見たい。
本作を見ればわかるが、次のお母さんになる役の木村佳乃は、登場時にこの話し方は木村佳乃だなと理解したが、話が進み、あるシーンで慟哭する当人の声は、別の人が声を当ててるのかなと思ったくらい、イメージできないほど慟哭の声だった。
わらわら役の滝沢カレンなんて公式が発表する前は全く分からなかった。
恐らく、ジブリならではのアドバイスもあるだろうから、この役は誰が演じているんだろうと思考する楽しみも感じられた。

僕の初めての映画館で見たジブリ作品が、本作で取り上げる「君たちはどう生きるか」だった。
取り立ててジブリ作品がとんでもなく好きというわけではない。決して嫌いというわけではないが、金曜ロードショーで放送しているから見るかという程度だった。
風の谷のナウシカはいまだ見たことがない。恥ずかしい話、やたらでかい芋虫が出てくる印象しかない。
思い返してみると、ジブリ作品との出会いは小学生時代で、随分前に亡くなった今でも好きな祖父が買ってくれた「となりのトトロ」「耳をすませば」「もののけ姫」のVHSで、今も実家にあり、買ってくれた当時よく見ていた。よくわからず見ていたと思う。
もののけ姫なんてその当時、本当に理解できていなかったと思い返す。

本作は最初に見て3回泣けるところがあり、1つは主人公が小説版の「君たちはどう生きるか」を見て泣いたシーンでもらい泣き、2つめは物語の中で母が息子を抱きしめるところで泣き、最後は米津玄師の「地球儀」を聞いておろおろと泣いた。
1週間後に再度見たが、同じところで泣いた。
なぜ泣いたのかは、僕はまだ完全に言語化できず、わからない。
〝少し不思議〟と〝相当不思議〟の間にジブリは置かれているような気がして、本作は一体どんな存在なのか、嚙み砕いて納得させられるほどに僕はまだ表現できない。

大人になって金曜ロードショーで「もののけ姫」を見た時、全く変わった見方だった。多少の犠牲は逃れられず各々が何かしらを守るために行動して、ゆえにすれ違いが発生して大いなる存在が立ち塞がる。その大いなる存在も何かしらを守るために行動しているはず。

この作品は上映当初、「ババアの集大成」と言われたことがあったことを記憶している。
はて…?と思いつつも見たら今までのジブリ作品に登場したババアの影が見えた。
ババアのみならず、あれ、このキャラクターってあの映画あのキャラクターに似てるなと想起することもあるかもしれない。
もしもそれが宮崎駿の〝しめしめ〟だったら、僕はまんまとハマったかもしれない。
それほどに、宮崎駿ないしジブリが手書きあげた作品に重ね合わせられてしまうのが本作だ。
さらに妄想するのであれば、宮崎駿が「私は今までやってきました。これの集大成がこれです。はい!ほらさて、どうどう!私はこの「君たちはどう生きるか」を今までのキャリアをまとめてこういった表現で出しましたけど、あなたたちはこれからどうやっていくのでしょうか?」とイメージした。
大なり小なり僕の偏見はあるが、宮崎駿の集大成や今までのキャリアを全て固めて結晶として、本作は未来への礎と感じられる。これは僕のいち妄想なのでご了承いただきたい。

この映画は金曜ロードショーで放映してくれるだろうか。
できたら放映してほしい。そして、ジブリ映画の終わりには「おわり」と書かれているのだが、本作には書かれていなかったと思う。
それが、何度も引退宣言をしている宮崎駿の、逆に本当に終わりでないことを祈る。
僕はもっと映画館でジブリの映画を映画館で観たいと思ったから。

前述にもこの映画を見て泣いた理由がなぜなのかがわからない旨を記載したが、何年後かに見て、いつかわかりたい。未来の自分自身のいつかを生きている上で、この映画が何かに気づくきっかけになってほしい。

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