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苦情件数でみえる?組織の健全性~【解説】人的資本可視化指針(第22回:KPIシリーズ)

人的資本KPI。コンプライアンス関連では「提起された苦情の種類と件数」が推奨されています。IOS30414にて紹介されていることが理由のようです。具体的には
・ハラスメント
・職場環境
・その他
のように大別されます。

そもそもの定義は、会社で起きた不満や相談などで提起される苦情としてカウントされる件数の合計です。人事部門への相談、苦情、各種ハラスメント窓口などへの相談などの行動といってもいいでしょう。

苦情とは何か

ただし、苦情と言うのは定義が難しいものなのです。話を聞いてみると「文句」「愚痴」に過ぎないものもあれば、制度や定義に照らしてまっとうな「苦情」の場合や「有益な提案」と言われるものもあります。相手がどうとらえられるかによって変わってくるわけです。
一応の定義を確認すると

・処置に困るような苦しい事情
・他から迷惑、害悪を受けていることに対する不平不満を表わしたことば

英語でいうと
・claim⇒正当なもの、当然の権利として要求するもの。要求に近い
・complain⇒不平、不満、文句、愚痴、苦情
という違いがあり、厳密に切り分けるのは難しいと思いますが、内部での人事部門への苦情ということにしておきましょう。

社内ですので、サービス業が顧客から受けるような、不当な要求、いちゃもん、業務妨害、過大な要求、無理難題のようなものも中には含まれるかもしれませんが、ある程度節度のあるものと言っていいでしょう。

また、大前提として、苦情といっても、組織文化にもより違いがありますし、人々の捉え方は様々ですので、明確な定義を設定する必要があります。

人的資本可視化の指標として・・・・

ただし、指標としての有用性は正直「△」と評価します。豊田通商さんが公表している「Human Capital Report 2022」では0とか1という数値が並んでいます。公表行動はなかなか勇気がいることだったと思いますが、なかなか評価は難しいものです。

0件、1件・・・・・と測定し、記載することで、コンプライアンス相談窓口が設置され、機能していることが示されると思いますので直ぐにできるのなら公表してもよいと思います。

ただし、ベンチマークするにしても、企業ごとに件数の比較するにも前提も違うし、定義も違うし、窓口の役割や位置づけや社内認知度も違うので、比較に意味があるのかというと正直のところ、疑問があります。数字の「意味」がわからないし、「だから何」って思ってしまう投資家もいるかもしれません。
どちらかというと、内部において、その苦情や苦情に至る要求などは価値があると思っています。

苦情発生のメカニズム

人は仕事をしていて、または組織の一員として存在する中、ある程度期待を持ちます。その期待が外れたり、対応に納得いかない、軽るんじられたように感じるなどがあった場合、不満と言う感情を持ちます。それが度を過ぎると怒りの感情に代わります。そして、いうべきかいわないべきかメリット・デメリットを考慮して苦情を申し立てます。心理学的に簡単にまとめると

期待とのギャップ発生⇒不満⇒怒り⇒苦情

筆者整理

このような過程なので、満足度やチームワークが完璧であっても、「生きている」組織である限り、発生してくるものです。

苦情の経営・人事における意味

人的資本・経営的にいうと苦情というのは、非常に重要なポイントではあります。社員からの声・意見をどれだけ吸い上げているのか?ルートを作ってしっかり耳を傾け対処しているか?が可視化されるからです。
しかし、人的資本においては、内部の活用の方が有用かもしれません。先ほど苦情や苦情に至る要求は非常に人事の改善に活かせると話しましたが、人事部門の施策評価において、ユーザーの声は非常に重要です。人事施策への不満足を示すデータであり、改善するための非常に参考になる、有益な「宝」とも言えます。人事施策へのアンケート結果の分析はとても有用であります。データドリブン的なHRとしても内部の従業員の声を聴く、傾聴することは戦略人事を進める上での「財産」になるでしょう。

PS:TL人的資本ガイドブック もし欲しい方がいらしたらご連絡ください(企業の人事担当者に限ります)。

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