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懲戒処分の種類・件数で何がみえる?~【解説】人的資本可視化指針(第23回:KPIシリーズ)

人的資本KPI。コンプライアンス関連では「懲戒処分の種類・件数
」が推奨されています。IOS30414にて紹介されていることが理由のようです。

懲戒とは?

企業が、従業員の就業規則違反や企業秩序違反行為に対して、正式に制裁を科す処分と定義されます。簡単に言うと、ルールを破ったりして会社に罰せられることです。上司から注意されたり、怒られたり、社長から説教されたり・・・・のレベルではなく、会社からの公式な「処分」となります。
具体的にはこの7つがそれを言います。

戒告
譴責(けんせき)・・・始末書必要
減給
出勤停止
降格
諭旨(ゆし)解雇
懲戒解雇

就業規則においてルールを決め、それに従うという手続きです。
横領、背任、就業規則違反、風紀を乱す行為といった「罪」に対する「罰」と言った位置づけになります。

上記は各段階で対応が異なり、下にいくほど、レベルが厳しくなってきます。ちなみに、諭旨解雇では比較的退職金が支給されますが、懲戒解雇では全額支給されないそうで、この二者間に大きな一線があるようにも思えます。

人的資本可視化KPIとして

さて、人的資本可視化においての目的は何かということについて考えていきましょう。そもそもどれくらいルール順守が行われているのか(問題を起こしていないか)、そして、問題が起きたことをしっかり社会に発表しているか、ということが問われていてでしょう。ある意味、公的存在としての説明責任といってもいいでしょう。
懲戒処分の個別案件については訴えられるリスクもありますから、個別案件をオープンにしないのが妥当かもしれませんが、何件あった、どれくらい発生したのか、は投資家としても気になるところかもしれません。ベンチマーキングをすると、同業他社と比較して、懲戒が発生割合が高いor低い、具体的に内訳でみるとここ数年で増えている、などなど見えてくるものがありますから。

人的資本可視化KPIとしての評価

ただし、指標としての有用性は正直「△」と言う評価です。しっかり、公開しているということは大変良いことだと思っています。それだけ、内部をオープンにしていることを意味しますから。しかし、ビジネスの内実では難しい面もあるかもしれません。第一に、数字が独り歩きしかねないからです。数字を評価するのは難しいです。数字の多少・大小がどうこうの、ということに気が向いてしまうことです。懲戒件数が多い年があり、その数字の内訳を見て、その理由を分析したら、懲戒件数が組織風土に着せられなく、特定の社員個人の行動に責任が帰するようなケースも中にあるかもしれません。なのに、独り歩きの数字に振り回され、対応させられるといった(いらぬ)苦労を発生させかねません。

第二に、「数字」を出すことで起きる影響、つまり、「懲戒処分件数が多いんだけどどうなの?」と短期的には内部ではハレーションが起きる可能性もあります。ちょうど世間をにぎわす「事件」を起こした場合などはよりナーバスになってしまう人もいるかもしれません。懲戒処分を受けた社内事情もあるでしょうから何とも言えません。数字を出す決断をすることで、管理職の人事評価上の目標の1つなんかになってしまい、社内がルール完全順守主義になってしまい、結果として無謬性重視の組織・減点主義の人事評価・社員がミスしないことが大事の行動志向になってしまいかねません。

数字の解釈は難しい

数字を解釈するのも難しいです。
例えば、同じ懲戒件数、うちわけであったとしても・・・・
A社:組織内がオープンで・公正さがあいまいな組織、懲戒処分は厳格適用
B社:組織内がクローズドで・公正さにこだわる組織、懲戒処分は緩やかな適用

と言った場合、数字の比較だけでは何とも言えないという状況が発生するでしょう。企業によって規則の厳しさや運用は様々であります。なのでこの数字の意味を解釈・評価するのはなかなか難しいことになります。

公開するかどうか。投資家が気になる業界特性であるのか?や投資家が気にする業務特性があるのか?投資家から見て過去に不祥事を起こしたり再発するかもしれないのではないか?内部通報の問題が気になるところがあるか?という疑問・疑念の存在次第ではないかなと思うところです。

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