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【人事評価の未来(第4回)】大谷翔平から「日本の人事評価」を考える②:戦略にあわない人事評価でいいのか?

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大谷翔平さんのサイバーメトリクスを前回は見ましたが、結果が見えやすい業界であることもあって、野球選手のようなプロフェッショナルの人たちは厳しい世界に身を置いていると感じます。打率、ホームラン数など、数字を毎日、いや一瞬一瞬、目の前に突き付けられるわけです(さらに周りからいろいろ言われます)。並みの精神状態ではやってられないでしょう。

さらに、ご紹介したように、評価指標であるKPI(業績評価指標:Key Performance Indicator)が様々な方法で開発されて、選手の「価値」を測定しようという動きがどんどん生まれるという状況です。
「結果」が問われる仕事というのは本当に大変だと思います。

業績評価じゃないほうは?

企業の人事評価では、一般的には、能力評価と業績評価の2つから構成されることが多いですが、野球選手はどうなのでしょうか?というと・・・・やはり業績評価がとても重視されるみたいです。練習から状態や能力のチェックを受けるものの、公式試合以前に練習試合で試されますし、そこで結果が出てしまいます。試合形式の練習においても、ほぼ業績評価のような指標が測定できるからです。まとめると、「能力<業績」と比重が業績重視ということなのでしょう。

では、能力評価はないかというとそうでもありません。あります。だいたい、以下のような感じになります。つまり、高校野球のスカウトが練習を見たり、一緒にプレーしたりして観察したりして明らかになるような、いわば「基礎」能力になります。

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【出典】筆者作成

企業の人事評価の「現状」

さて、業績評価に全ブレしている野球選手の人事評価と違って、ビジネスパーソンの人事評価は以下のような特徴があります。

・すぐに結果・業績が見えない(時間がかかる)
・目標を設定して達成度を測定するが評価が難しい(目標設定のレベル感が違い公平性確保からどんどん指標が増え複雑化)
・業績測定といっても外部要因が大きい(厳密にいえば華々しい成果でも、運や前任者のおかげや周りのサポートの面も。個人に要因を帰属できない)
・安定を重視するので評価項目は柔軟に変化できない(経営層からは疑問を持たれる)
・若いころは能力評価の比重が大きい(中堅になって必要ですかね・・・)

【出典】筆者作成

いろいろな事情が複雑に絡むので、人事評価の運用の現状は仕方ないとも言えます。しかし、もうちょっと「経営への貢献度」「結果における主導性」などを見てもいいのでは?と思ってしまう企業経営者も多いでしょう。人事評価項目を見ると「業務や与えられた仕事をきちんとこなすことを測定する評価項目もいいけど、そろそろ改善が必要なのでは?」「改善実行力や創造性発揮などはどこにあるのか?」、そして「そもそも経営改善やイノベーション、業績向上につながる取組みや役割発揮をもっと重視しては?」といった思いをもってしまうものです。仕事が何十年もかわらないということはありません。

野球選手でさえ、個人プレーだけでなく、勝利への貢献度を測定できる指標で見るようになっているという時代だから

企業の人事評価の方向性

日本の人事評価制度についてよく相談を受けることが多いです(いちおう専門家です)。皆さんは悩みが深いものです。人事評価シートの評価項目の設計、360度評価の導入可否、面談の在り方などなど。上層部からのプレッシャー、若手からの疑問提示、論理的に説明を返せない部分もあるので、なかなか難しいものです。組織にとって永遠の課題と言ってもいいでしょう。人事評価シートを見て本音ベースでは疑問を感じることがありますが、なかなかその理由を確認しない前に意見は言いずらいですので、悩みを抱えて、なんとか「こなすこと」を進めてしまうという悲しい現実がそこにはあるようです。

社員の方々、人事評価シートを書く方も本当に「大変」なんです。

目標達成度評価もそもそも難しいものです。目標のたて方によって、思っているより下目の目標を設定すると、結果的に評価が良くなるということもあるかもしれません。そうしようというインセンティブが働くかもしれません。そういう人が増えた結果、経営者には「使えない評価」となってしまうこともあります。そうならないよう、整合性をとるために、インセンティブ、困難度・・項目がどんどんどん「増築」されてしまっています。そうすると、評価シートを書く方も見る方も、より大変になってくるのです。評価のための評価、と言われてしまう事態も発生します。

この結果、人事評価の担当は、きちんと運用すること、整合性や公平性確保で普段でも大変なのに、人事評価の目的である「人財育成」について目を配る余裕がどんどん減ります。そして、複雑化した人事評価システムは、論理的整合性を確保するため、調整や作業時間などが必要になります。本当に大変です。人事担当の立場の苦労は本当にわかります。

しかし、VUCA時代、経営環境が厳しい中、人事評価ももっと「シンプル」にしませんか?「「戦略人事」ということですから、経営や組織目標からもっとブレークダウンできた目標にしませんか?今の業績指標で十分なのでしょうか?
皆さんはどう思いますか。

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