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【人財育成論第6回】ジョブ型雇用が日本を救う???(その1)

ああ

【出典】六本木ヒルズ(筆者撮影)

ジョブ型雇用についての相談を受けることが多くなりました。
ジョブ型雇用とは・・・・

職務内容を明確に定義して人を採用し、仕事の成果で評価し、勤務地やポスト、報酬があらかじめ決まっている雇用形態

です。簡単に言うとポストで人を雇う仕組みといっても過言ではありません。

職務:職務や勤務地が限定
採用:新卒採用でなく、欠員補充時に募集
雇用:完全に保障できない、職務給

といった特徴があります。

◇避けられれないジョブ型雇用

一方で、「ジョブ型雇用は早い」「どうやったらわからない」という声もよく聞くのです。
これまでとは大きく変わるのでそれに対して悩むのは仕方ありません。しかし、ジョブ型雇用は企業の未来にとって、必然ではないかなと思っています。避けられないです。

なぜか。

それはコスト面が大きな要因だと思われます。

つまり、
・これまで「メンバーシップ型」であった一括採用、年功序列、終身雇用、勤務地やポストは会社が人事権の裁量で決めるといった雇用形態では管理や社内調整、異動他、様々なコストがかかる
・世界的な競争を前にして、企業にはメンバーシップ型の雇用を継続する金銭的余裕はない
からです。

失礼な言い方ですが、メンバーシップ型(いわゆる日本型雇用)はまさに高度成長時代の遺物みたいなものです。将来的に様々なポジションを経験させて、幹部に育てていくことは、その時はうまく機能していて、それなりに成果は出たはずです。

しかし、前提となる環境要因が変わった中、メンバーシップ型雇用を機能させられるでしょうか。世界的にも激化したグローバル競争、そしてそうした経営環境の中、それだけの余裕が企業側もありませんし、将来不安を抱える社員にとっても、会社都合で人事配置が決められ専門性が身につきにくいという不安や不満が募るばかりなのです。

◇メリットとデメリットの整理

メリットとデメリットの整理をしていくと以下のようになります。

メリット

【出典】筆者作成

上記の中でも、企業側には多数のメリットがあります。専門スキルや知識を持つ即戦力人材を採用でき、意欲のある社員のモチベーションを上げることができ、年功序列でのコスト増大を抑制できるというものです。メンバーシップ型雇用制度を維持して社員を育てても、管理職にならないとゼネラリスト的な能力は活かせるチャンスが少ないですし、そもそも管理職のポスト自体減っています。人財育成面でも改善が必要です。

社員は1人1人の業務に必要なスキルを磨き、そのポジションを得て、そこで成果をださなければならないという意味で、社員にとっては厳しい環境でもあるかもしれません。ただし、これまでのように自分の考えているキャリアに沿わない業務や会社への配置転換への不満を言うことで済ませられなくなります。「大人の仕組み」であるといってもいいでしょう。

◇個人の自主性を解放する?

個人レベルでは、人生100年時代、つまり一つの会社に拘らず自分の経験やスキルをベースに働いていく時代には、どう考えてもジョブ型雇用は社員の未来に寄り添っていると思われます。現実、そううまくは希望通りのジョブにはありつきませんが、自分でキャリアを描き、そのために何をすべきかんを考え、行動する。人事部から決められた職場や仕事で、自分に向いていない、好きでもない仕事を我慢して行わざるをえない状況と比べて、いかに人間らしいことでしょうか。

あせ

【出典】右が筆者

筆者が入社したアクセンチュアでは、プロジェクトやジョブごとに面接・採用が行われ、マッチングされないと「アベる」(availableの意味)という状況に留め置かれることもありました。いわゆる、社内失業のようなものです。選択肢は少なくなったとしても、最終選択権が自分にあるということは心理的にはポジティブなものでしたし、成長しないといけない、下手な仕事はできない、という意識や危機感をもたらすものでした。

◇ジョブ型雇用が日本経済を救う?

ゼネラリスト育成、終身雇用、定期昇給、年功序列のメンバーシップ型雇用がもたらす数々の問題を多くの日本企業は我慢できる限界を超えたと筆者は考えています。

そもそもメンバーシップ型は高度成長期の、日本型組織にとってうまくカイシャ共同体として機能した、労使にとってもしあわせな時代が生んだ「奇跡」ですから、早めにそこから抜け出し、改善した方がいいに決まっています。

先ほど書きましたが、
・専門的スキルをより深められる
・異動や転勤などがない
・スキルや経験で給料が決まる
・自主的にキャリアが決められる
というのは社員の自主性を促す点に特徴があります。

くれぐれも注意していただきたいのは、社内失業している社員は解雇すべきということを言っているわけではありません。社内の業務や役割を明確化するなど会社も努力が必要です。社内失業している社員も、自分のキャリアを棚卸することが必要です。そのマッチングがうまくいかなければ、副業に限らず社員のキャリア形成に会社が積極的に関与する必要もあるでしょう。

個人的には、日本の生産性の低さには、「仕事の楽しさ」が大きく影響しているとみています。仕事のやりがい、満足度を感じられない仕組みを改善すれば、生産性が高くなると考えています。だからこそ、個人的にはジョブ型の可能性を感じるのです。

次回はジョブ型への移行を上手く制度設計するか、そのヒントについてお話していきます。

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