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インスタントな答え

全人類的にインターネットが浸透して幾年も経つが、検索という行為が人の欲求にもたらした影響は大きいと思う。
検索すればすぐに欲しい情報が手に入る。
明日の天気や、江戸時代の将軍、有名人の経歴、数学の定理など、検索窓に適当に文字列を放り込めば知りたい答えがすぐに返ってくる。もちろん、ネットの情報であるので間違っていることもたまにはあるが、ほとんどの情報は大体正しいだろうし、経験的に信じて間違っていたことも少ないだろう。

現代人はその検索生活の末にいつのまにか、答えが直ぐに得られる感覚に慣れ過ぎてしまい、最近は答えが無いものにも答えらしき物を欲している。
snsでバズった意見は「真」になり、書店にはハウツー本やビジネス書が積まれる。自身の出来の悪さには、ADHDや発達障害などという便利な病名が与えられる(もちろん、自己診断の場合だが)。
陰謀論もそうだ。現実に理解し難い、わからない問題が立ちはだかった状態は、現代人には一定のストレスになり不快感を与える。その状態で答えらしき分かりやすい論説(陰謀論)を提示されると、不快感から脱して安心できてしまいよく観測される陰謀論信者が生成される。
もちろんこういうのは極端な例だが、多少なりとも答えへの潜在的欲求はネット時代以前よりも増幅されているのでは無いかと思う。
逆にいうと答えのない状態に対する嫌悪感に繊細になっているとも言える。結局みんな安心したい。SNSで他人の行為が見え過ぎた結果、人間という非常に不可解な存在に潜在的に怯えて、インスタントな答えに頼ってしまう。他者を理解するのは重要だが、一方的な理解では齟齬が生まれるのは当然だ。

だからどうすればという答えもないが、それに対する答えを直ぐに求めてしまうのも現代の病だろう。
わからない事を前提として答えを自分でじっくり考えるのも乙だと思うのが良いのかもしれない。

トプ画はイタリア未来派の絵画「都市の夜明け」。
未来派の画家たちが描いたように世界が節操無く変動する時代に、人間までもそれに追従する必要はない。人間は自我を持って思考するべきで、インスタントな答えで思考停止していては一種の「答え」中毒に嵌って行くばかりだ。

↓これを聴きながら書いた
#3 Kokomo, INがお気に入り
2,3年前のフジロックでのdreams/the cranberriesのカバーも良かった

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