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バケツを持たない

「みんなやりたくないけど誰かがやらなきゃいけないこと」を引き受けがちな性格で、そしてそれは私の場合は優しいとか心が広いとかではなく、「嫌々やってるんだからな…私だって嫌なんだから……」と心を暗くして周囲を恨んだりするので、本当にやめたほうがいいと薄々感じていたのですが、なかなかやめられないまま歳を重ねてしまった。

中井久夫先生の表現するところの(もしかしたら孫引きかも)「バケツをもってしまう」をずっとやめられなかった。誰かがやらなきゃいけないことなら(そして誰もやりたくないのなら)私がやる、というかんじでずっと生きてきた。

最近、それをやめてみた。というか、やめることを試みている。

つい最近、職場で「誰がこの日休日出勤するか」みたいな状況になり(どうしても当番制で誰かが行かなきゃいけない)、恐らくやんわりみんな「この日は避けたいな…」みたいな日があって。そして私が避けたいのもそのあたりで。

多分私の今までの状況的にも(職場への貢献度がまぁダントツで低い…)、普段の性格的にも(雑用的なことは一応率先してやろうとはしている)、「じゃあこの日私行きますよ〜!」ということが期待されていたのだろうし、多分望ましい言動ではあったんだろうけど、私は黙って、黙って、黙って、別のひとが渋々「じゃあ…」というまで黙っていた。

どう思われようがいい、とまでは思えないし、できれば周りの人の助けになるような言動をとりたい、とは思う。

でも私は自分のことを犠牲にしたくないとも思うようになった。「自分を犠牲にして犠牲にして、恨みのエネルギーをうっすらまとって日々仕事する」よりかは、「まずは自分を大切にして、迷惑をかけてしまうことがあれば周囲のひとにごめんやで…そしてありがとう…と心から思い、自分にできる範囲のことを淡々と丁寧にやる」を選ぶ方向に舵をきろうとしているところ。

そんなこんなで今回は、「バケツをもたない」という試みにとりあえず1件、成功した。私なんかがバケツを持たないことが許されるはずがない…という気持ちがうっすら心に膜をはってる状態を少しずつ脱していきたいし、今回はそのための大きな一歩だったと思う。

もしかしたら職場の人に「この期に及んでこいつ…」と思われてるかもしれないが(恐らく私は周囲と比べて仕事量が格段に少ない)、まぁ今は許してくださいな、今わたしメンタルご自愛最優先にしてるし(最近少し調子が悪くて、ようやく浮上しつつある)、今後ゆっくり頑張るんでひとつよろしくお願いします…くらいの気持ちでいたい。


(ご自愛活動の一環として、今週は1日有給を取って平日に日帰り温泉に行くことにした。やったね。あとは週末の3連休は夫がワクチン4回目接種に行くので、副作用があれば看病、あとは私自身もゆっくり家で心身を休めようと思う。

今回の、「バケツ誰が持つか案件」は、とどのつまり3連休誰が交代で出勤するか案件だった。万が一私がいない間に夫がひとり家で苦しむこととがあれば、私はこれまた職場をうすら恨んでしまうので、まぁこれでよかったのだ。そう思うしかないし、「じゃあ私が…」と言ってくれたひとに心から感謝してゆっくり休む&仕事ちゃんとやる(この2つはセット)のが健全だと思う。)



そうはいっても消せない罪悪感はあり、もやもやしながら入ったごはん屋さんで、ハンバートハンバートがカバーした「教訓 I 」がかかっていた。今の私にすっと入ってきたので、帰り道にも何度もきいた。

命はひとつ 人生は1回
だから 命を すてないようにネ
あわてると つい フラフラと
御国のためなのと 言われるとネ

「御国」、というのは時代もあるだろうしおそらく私は政治的に思いきり左側にいるためか感覚的にしっくりこないので、心のなかで勝手に「組織」「職場」、あるいは「(社会的な存在として有益な)自分」みたいに捉えて聴いている。

組織のため、職場のひとたちのめ、そして社会人としての自分の成長のため、とかそういうことよりも、うっすら自己犠牲が積み重なっていって「死」が頭をよぎること、それを避けることのほうが私にとってはよっぽど大切なんだよな。

戦争のことをうたっている歌、なのだろうけど、今学校とか会社がつらかったりして精神的にしんどいな、というひとの心にも訴えてくるものがある歌だと思う。

青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい
御国は俺達 死んだとて
ずっと後まで 残りますヨネ
失礼しましたで 終るだけ
命の スペアは ありませんヨ

命のスペアはないんだよなぁ、ついうっかり忘れそうになるけど、本当にそうなんだよなぁ。少しの心の削れも、積み重なれば大きな穴になるし、うっかりその暗い穴に吸い込まれそうになることだってあるから。

今は逃げる、隠れる。バケツも持たない。


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