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Merry Christmas~未来は未来の風が吹く

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
大人な表現ありです。気をつけてください。

もうすぐ年末か

街はクリスマスイルミネーション。キラキラしていて綺麗だな。いつも見ている景色だけれど心が洗われる気がする。

クリスマスの音楽がかかっていたり、会社帰りにはよく仲良く過ごすカップルも見かける。良いねえ。

もう少し若い頃なら嫉妬の気持ちが強かったけれど最近はあまり気にならない。

申し遅れました。私は知里(ちさと)。市内のモノづくりの会社に勤めるOLで45歳独身です。実験データを証明書や報告書にしてまとめ上げるのが私の仕事です。最近は同じ仕事の若い子達を指導したりまとめています。
5年前に私は実家を出て今は1人暮らしをしています。役職はありません。会社に行きながら趣味の音楽をしています。

昔は恋をしなかったわけではないが、遊ばれてしまうだとか、告白されて怖くなってしまって相手と距離を取ってしまい、縁が切れてしまったり。
こちらが告白めいた話をした途端向こうから距離を取られたり、フリーなはずだと思っていた好きな人が実は彼女持ちだったとかいろいろあった。

そしてアラサーになり、婚活もしたが全滅。親や兄弟、友達の紹介も結構あったが全てご縁が無く。

しばらくは凄く落ち込んだ。私ってこんなにチャンスはあったのに全部ダメになって、性格悪いのかな?と。

チャンスはあっても結婚するまでは処女でいようと思っていた。そういう考えが固いから、男の子が距離を取っていくのではないかと会社の先輩に言われたこともあった。
そうかもしれない…。でも昔から慎重で真面目過ぎるのが性分で。
そういう性格もあり、やる事もやったのだからもう無理だなと今から10年前に全て諦めたのだ。

きっと私には他の人とは違う使命があるのだろう。
この年だけど、大きな夢、年末の人気テレビ番組の桃白歌合戦に出る事をよく妄想しているし、趣味系かな。
会社は27歳の時から働いている。もう腰掛けではなくて本気でやらないとと思って頑張ってきたつもりである。この会社で私にしかできない仕事を持ち、その道を歩くのも良いか。

大きなミス

ある日すごぶる体調不良だったりマイナス思考の嵐に襲われていたが、仕事は仕事なのでかなり無理して出勤したのだ。最近夜中出掛けたりお酒を飲んだり夜更かしをしていたわけでもない。

新人やまだ経験の浅い子の指導や仕上がった書類のチェックも私はした。

しかしながら後々クレームが入ったが、受付でお客様を対応した時にすごぶる感じが悪かったようだ。ほとほと私は疲れていた。言い訳だが。

加えて絶対にやってはいけないミスを見落とし、そのまま書類を出してしまったのだ。

もちろん私は所長室に呼ばれ、こっぴどく叱られたのだ。

最悪この会社、辞めないといけないかもしれない…。
もう次を考えておかないといけないかな?
でもまずは今後頑張って挽回しよう。

新しくやってきた係長
何と先ほどの事件の直後に新しい係長が入ってきたのだ。前の係長が居なくなって2か月くらい経つのだ。その方も良い方だったが。

新しい係長の名前はレン。
長身でスラっとしてスタイルも良い。どうやら同い年のようだ。
端正な顔立ちで切れ長の済んだ瞳にぷっくりとした唇、そして髪の毛ももともと色が明るいようだ。

会社の女子たちがざわめいていた。

確かに少女漫画の世界や、ドラマの登場人物がそのまま出てきたような出で立ちだった。

私は彼の事は何とも思わなかったし、年齢的にも絶対に結婚していると思っていた。

彼とはなんと隣同士で机を並べて仕事をする事になった。出会って間がないがお互いに困った時は相談相手になる間柄になっていった。最初は仕事の話ばかりだったが、気が付いたら一緒にコーヒーを飲みながら話をしていたり。

一番驚いたのは、私が帰宅するときに彼が湯沸かし室で何かしてると思っていたら出てきて、
「一緒に帰りませんか?」
と声をかけられたのだ。

「はい。良いですよ。」

何故私が声をかけられたのか?

他愛のない話をしながらも凄く楽しい帰路だった。結構家も近いし、彼も1人暮らしをしていて実家同士も遠くない。なんと彼は独身だったのだ。私と同じく結婚歴も無し。不思議だった。
何だか初対面だったはずだが全くそんな感じがしない。

彼はやはり上司でもあるから威厳がある。しかしながら天然だったりふと見せる笑顔が優しかったりでだんだん彼の事が気になりだしたのだ。そして自然と一緒に帰る事が当たり前になってきたのだ。

クリスマスイブ

「良ければ食事に行きませんか?」

彼から誘いを受けた。もちろん答えはイエス。

昔遊ばれた彼は謎だらけで不安にしかならなかったが、この人は違う。本当の事を言っているのだと思うし間違いなく誠実な人だろう。

毎日会うのにメッセージのやり取りもするようになり、お互いに同時にメッセージを送信する事もあった。

彼から連絡が来るかな?ああ来ない…
などと悲愴になる事もなく、全てが自然体だったのだ。

日曜日の夕方から、オシャレなイタリアンのお店を彼は予約しておいてくれたようだった。

以前私がお弁当にスパゲティーを入れていたのを彼が見ていたようだった。
席が隣だからたまにはお弁当も一緒に食べるのだ。

私は若い頃を思い出し、事前に美容院も行き、丁寧目に化粧をしてワンピースにブーツを履いて出かけた。

彼は目を丸くしながらもにこりと笑い、
「いつもよりおしゃれだな。似合っているぞ。」
と言ってくれたのだ。

これで仕事だけの話で終わったら私は大バカ者かもしれないが…。
その可能性ももちろん覚悟していたのだ。

クリスマスイルミネーションの中、ゆっくり歩いていくと本当のイタリアの建物のようなお店に着いたのだ。

座席に案内され、スパゲティーにピザ、ジャガイモのニョッキなどてんこ盛りに美味しい料理が出てきたのだ。

そして大人なスイーツに。

彼とはいろんな話をしたが、先日のミスも彼は知っていた。

「私、実は会社を辞めよ…」
「その必要はない。もし誰かにしつこく今でも咎められているなら俺が責任を取ろう!」
彼は私の言葉を予想してさえぎったのだ。

「会社を辞めるときは結婚して家庭に入る事を選択した時だな。」
「まさかまさか。私はもう諦めていますし、そんな予定ありませんよ。」

若い頃ならセクハラだとか、怒っていたかもしれないが気にならなかった。

するとしばらくレンが黙ったのだ。

そして、
「結婚前提でお付き合いしてください。愛しています。」
とハッキリ言われたのだ。

私は内心ええええええええっ!とビックリ仰天も良い所だった。

間違いなくレンは会社内でも別格でモテていた。

私ごときで良いのだろうか?
不安になったのは確かだった。しかしながら私もレンの事が大好きになってしまっていた。

答えは1つ。

「はい。私も愛しています。よろしくお願い致します。」

何とペアリングまでプレゼントされ、これは絶対夢だな、でも全然覚めないな、どうなっているんだろうと半ば混乱したのだ。

でもまだ何があるか分からない。

この後彼の家に行くことになったのだ。

綺麗に片付いていたのだ。
そして照明も優しいオレンジで、気持ちが落ち着くのだ。
まるでホテルだ。

「頑張って片づけたんだぞ!」

彼はにかっと笑った。
彼は大人な中、可愛らしい子どもっぽい所もあった。
それが凄く可愛らしいのだ。

彼の家で少ししゃべり、そろそろ失礼しようとしたとき、
「今日は是非、泊っていってください。」
と言われたのだ。

泊まるとなれば、何があるかは大人なら理解できるはずだ。

若い頃なら、そのまま帰っていたはずだ。

しかしながらもう私は大人だし、もう良いか。
こだわる必要ないね…。

レンさん、信用できそうだし。

「分かりました。」
私は了承したのだ。

最初はこういう事があっても帰る気でいたが、帰らなくて良いと何かに言われている気がしたのだ。

その晩は私は初めてのセックスを経験したのだ。
彼はどのくらい経験があったか知らないが、不快さは無かったのできっと彼もあまり慣れていなかったのだろう。

私は誰にも触れられることなく、抱かれることなく、毎日馬車馬のように働く人生で死んでいくと思っていた。

「レン…」
「知里…」
「愛してる。」
お互いに一糸まとわない姿になり、交わり、朝まで繰り返し繰り返し…。

濃厚な口づけも何度も…。

会社でこんなことがあるなんて…
お互いにそう思ったのだ。

人生の変わり目

あのクリスマスの夜はお互いに忘れられない夜になったのだ。

そして正月は初詣も一緒に行き、楽しい時間を、そして甘い時間を過ごしていた。

そして…
あれ?私この間いつ生理が来たかな?

時は2月も間近になっていた。

確実に生理が飛んでいたのだ。

これまで私は生理がきっちり来ていたのだが、だんだん不順になってきたのかな?

それとも…まさかまさかか?

実は少し気分も悪く、通勤途中にえづく事もあったのだ。

妊娠検査薬をコンビニで買って会社に急いだ。

私は誰よりも早く通勤していたのだ。

そしてトイレで妊娠検査薬を使った。こんなに緊張したのは初めてだろう。早鐘のように心臓の音が響いている。

なんと指定の時間には全然達していないが、みるみるとラインが浮き出てきた。それも非常にハッキリと。

よ…陽性だ!

早めに彼に言わないと…。

そしてドラマなのか?
トイレから出たら彼が通勤してきていて、

「どうした?何かあったのか?」
「実は…かくかくしかじか」
「ええっ!分かった。ではすぐに結婚の準備をしよう。今日仕事終わりに時間はあるか?」
「はい。」
「では俺の家で打ち合わせをして週末から動こう」

45歳でまさかの授かり婚…
この慎重な私が…。

無事にレンのご家族からも反対はなく、結婚式まで終わりこの後は家族仲良く暮らすことが出来ました。

本当に本当に奇跡なんていつ起きるか分かりません。

今日の午後にポコッと起こるかもしれませんし、一寸先は光。
奇跡を経験した私が声を大にして伝えたい事です。



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