詩/原野2

原野2

夢と知りながら
生き残る算段をしてみたが
奴隷労働で
生きているためだけに生きていくのは
もう無理だった

突然 重心が消えて
胎盤から零れた
左右のない世界を
どこまでも落ちていった
(それとも昇っている?)

自分で決めた方向を見失い
よるべきものが何もない
私の家はどこ?

壁に耳をあて
吐息をさぐるように
息をひそめた深海
その時
最古の聖典よりも古いものが
すっくと立ち上がった

お前の体
ここに帰りなさい
複数の世界観が交わる奇跡の肉体こそが
中道なのだ
受肉の世界を生きねばならぬ者よ
生き残ろうとするから
不安になる
お前は今、死んだ

生きていてもいい理由は
もういらない

2024年7月

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