詩/涙

争いが絶えない

人間の持つ人間性に失望している
宇宙全体が一つの神、
あるいは命だと知っているので
人間をこのように運行している神、
あるいは命にも失望している
神あるいは命が
自身の性質に失望している
そんな世界の中で
傷つけられて流れた涙の中に、ある時
報復せず
憎しみの連鎖を断たんとする、
辛抱の萌芽を見て
神あるいは命は
自身に初めて希望を持った
たとえそれが
太古の雨の最初の一滴のように ※
地上に届かなかったとしても
確かに
希望を持った

2023年11月

※ 数十年前に読んだ、光瀬龍『百億の昼と千億の夜』(ハヤカワ文庫)の序章にインスパイアされた一行です。

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