詩/フーンズオンホテル

フーンズオンホテル

昼下がりの小道は人影もまばら
時折、ふたことみこと
ベトナム語が通り過ぎる

窓もドアも全開にしてベッドに転がり
メコン河畔で止まぬ音を数える

ボートのエンジン、
ファンの回転、
、 、 、

何もしないでいると
日本語さえも溶け始める
ここは
理解以前の場所
思考も止んで
私をさがすものもいなくなる頃
眠った

水シャワーを浴びて着替える
シャツを取り込みに屋上へ出ると
新宿通りで見たのと同じ、
得体の知れぬものの凝視
瞬きもせず

どこにいたって同じか

夜更けて
ボートのエンジン、
ファンの回転、
、 、 、

水を飲む
カノープスをさがしに出る

1997年1月

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