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横尾忠則 寒山百得展

〈横尾忠則 寒山百得展〉
・東京国立博物館
・会期12月3日まで

伝統的な絵画主題である「寒山・拾得」と呼ばれる2人の詩僧を独自の視点で再構築し描いた絵画102点が公開されています。
※以下、感想です。
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ゴンドラに乗る寒山拾得

まるでハネムーン中の2人


悪ふざけする寒山拾得

女性に甘える寒山拾得

まるで母に抱かれて安心している子供のよう

ゴッホに会う寒山拾得

etc…
自由な解釈が面白くて、思わずくすっと笑ってしまうような絵もたくさん🤭

横尾さんの描く寒山拾得を見ていると、彼ら2人が肉体を持つ僧侶ではなく、観念としての僧侶なのだなということが伝わってきます。
だからどこにでも現れることができるし何にでもなれるのかなと。自然にも人工物にもなれるし、ゴッホにも会える。

伝統的な寒山拾得の絵では箒と巻き物が彼らの持ち物として描かれますが、横尾ワールドでは箒の代わりにクイックルワイパーのようなものが描かれていたり、巻物に至ってはなんとトイレットペーパーになっています!
それらはどの絵にも描かれているのでいかにもパワーアイテムのように見えますが、私には特に意味のないものに見えました。例えば小学生の男の子が掃除の時間に箒をギターに見立てて弾いているような。そんな風に寒山と拾得はただ持ち物を使ってふざけ合っているだけなのかもしれません。(観念がふざけ合うとはどういうことなのかはさておき)

そして特筆すべきは線のタッチです。
展覧会を通して、ぐにゃぐにゃな線で描かれている絵が多い印象でしたが、特に写真2枚目の絵はぐにゃぐにゃを通り越して震える線だけで描かれているように見えます。
それもそのはず。実はこの絵を描いている時、腱鞘炎の痛みで思うように手が動かせなかったのだそう。
それについて横尾さんは「まっすぐ引こうとした線が腱鞘炎でぐにゃぐにゃになったりする。それは自分の限界をちょっと超えてくれるなという気はします。」と述べています。さらに「もしもっと体がひどい状態だったら、もっと面白いことができたんじゃないかな。(中略)いずれ歳とともにそういうときが来たら「お任せしましょう」と思っています(笑)。 」とインタビューの中でお話しされていました。

それを知った上で改めて絵を見返すと、震える線に生命が宿り、まるで線一本一本が振動しているかのようにも見えてきました。絵画とは作家の生き様ですね。これからの横尾ワールドがどう進化していくのかも楽しみです。

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【寒山拾得とは?】
寒山と拾得という、中国、唐の時代に生きた伝説的な2人の詩僧。高い教養を持ちながらも洞窟の中に住み、残飯を食べて腹を満たすなど人目を憚らない自由な振る舞いは禅宗の悟りの境地を表したものとされています。中国・日本において古くから描かれてきた題材を、横尾さんが独自の解釈で再構築した新作102点が公開されています。作品数にちなんで展覧会名は「寒山百特」になったそう。

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