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クマと暮らせば
うちにクマがやってきて1週間が経った。
近所のコンビニの前で出会ったクマ。
シロクマの絵がついた夏季限定マンゴー味のアイスがどうしても食べたかったのだそう。
買ってあげたら、そのまま家までついてきた。
レジでもらった木のスプーンでざっくざっくと力強く凍ったマンゴーを砕いて、豪快にアイスを食べたクマはとても満足そうだった。
お礼に子守唄を歌ってくれるという。
「わたし、もう大人なんだけどな......」
そう思いつつ、断る理由も特にないのでお願いする。
拍子に合わせて私の背中をトントンとしながら歌うクマ。大きな体に似つかわしくないその声は、キャンプの夜に聞いた川のせせらぎみたいにおだやかで、気づけば夢の中。久々にぐっすりと眠った。
以来、クマは我が家に居座っている。
人がいる空間が苦手だ。心がざわついて脳内が忙しくなって何もできなくなる。
だけど、クマはそんなことお構いなしに私の本を好き勝手に読んだり、冷蔵庫を漁ってご飯を作ったりしてマイペースに暮らしている。つられて私も気にせず1人の時と変わらないペースで暮らしている。
なんだ、わたしもクマみたいにできるじゃん。
眠る時、クマは布団のようになってギュと私を包み込む。
他人に抱きつかれるのは苦手だと思っていたけれど、相手がクマなら恥ずかしくない気がした。そして、もうさみしくなかった。
大きくなって、大人になって、さみしいって思うのは恥ずかしいことだと思っていた。クマにそう話したら、人間は大人と子供で別の生き物になるの?と首を傾げていた。
クマのせいで部屋はちょっと狭くなったけれど、この共同生活は悪くないなと思っている。
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ちょっと結末の違う、縦書き版を作りました。
小説『クマと暮らせば。』
— 小俣 荘子 (@omata_shoko) September 21, 2020
コンビニで出会ったクマと暮らし始めたはなしです。
夏季限定アイスは終わっちゃったけど、鮭がおいしい季節ですね。 pic.twitter.com/RAtRCpb1h1
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