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廃墟マンションの主。怪談・逢魔が時物語「幽霊マンション」

通っていた小学校の近くに『幽霊マンション』
と呼ばれる廃墟があった。

ある夏の日、数人で探検しに行くことになった。

友人のランドセルには、黙って家から持って来た
インスタントカメラが忍ばせてある。

その廃墟は名古屋のМ区の閑静な住宅街にある。
細い坂道を上がった林の中にぽつんと建っていた。

「これかぁ……」
廃墟の付近だけが薄暗く、不気味な佇まいだった。

マンションは四階建て。
外付けの螺旋階段を利用するようになっていた。

建物は半分朽ちていて蔦が生い茂り、螺旋階段も
錆だらけだった。

まずは一階。
部屋のドアノブを回すが、鍵がかかっている。

螺旋階段を二階へ上がる。
ここもドアノブを回したが開かない。

三階、そして最上階の四階も同じくきっちり施
錠してある。
みんなは拍子抜けした感じで階下を見下ろしていた。

「な~んだ、何にもなかったなぁ」
 
そう言い合い、階段の上から写真を一枚撮った。

内心ホッとしつつ、強がって不満を口にしながら
一階まで降りた。

すると、いつの間に現れたのか、杖をついた
白髪の爺さんが立っている。

(なんだよ……このジイさん、気味悪いなぁ)
みんな同じようにそう思った。

「お前ら、こんなとこで遊ぶんじゃない!」

しわがれた声で、睨みつけながら大声で怒鳴る。
爺さんは一人一人を見回しながら続けた。

「お前らの学校の校長は知り合いだ。言いつける!
 名前を言え!」

杖を振りかざし、威嚇しながら迫って来る。

「逃げろー!」
誰が言ったか、それを合図に脱兎の如く坂道を
走り逃げた。

私は逃げ遅れて最後尾になってしまい、
爺さんが追って来ないかと振り返ってみた。


ところが、さっきまで
爺さんが立っていた所には誰もいない。


「逃げろ」という合図からわずか数秒である。
隠れるような場所などどこにもない。
怒鳴られたことより、こっちの方が怖かった。

翌週、学校に行くと何だか教室がざわざわしている。
マンションの四階から友人が撮った写真を見ながら、
みんな興奮している。

友人の撮った写真を見てみた。
赤いモヤのようなものが、マンションの下の方を
覆っている。

その辺りは、あの爺さんが立っていた場所。
その爺さんが消えたことを、皆には怖くて
言えなかった。

        投稿 Nimrodさん(男性・東京都)



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