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夢で、人形にガブリと・・・。怪談★逢魔が時物語「夢の人形」

Tさんという男性が、小学三年のときに体験した話。

彼はしょっちゅう見る夢があった。
どこかの山深い村の夢である。
とても平和で、着物の子供達がいつも遊んでいる。

ただ、ある夏の夜に見た夢は、いつもと違っていた。

彼は轍のついた砂利道を歩いており、もうすぐ村へ
着くところだった。

辺りは不気味な雰囲気で、空は異様に赤かった。
道の先に祠があった。

近づくとボロボロの祠で、蝶番が壊れている。
観音開きの扉が開いていて、祠の中が丸見えだった。

(ああ、これは見てはいけない……)

そう思いながらも、つい中を見てしまった。
中にあったのは、ボロボロになった市松人形。

気持ち悪かったので、祠から視線を外して通り過ぎた。
すると、カラカラ……ガチャッ! という音。


思わず振り返ると、市松人形が道に転がり出ていた。


(ヤバイ! だけど、走ってはいけない)
そう思いながら、とにかく速足で歩く。

すると、後ろからチャリチャリと音がする。
市松人形がついてきている。
こっちが速足になると、向こうも速足になる。

パニくって、叫びながら走った。
振り向くと、人形が飛ぶような勢いで追いかけて来る。

あっという間に追いつかれ、人形はこっちに向かって
ジャンプした。
そのまま、がぶりと尻のつけ根に噛みついてくる。

そこで夢から目が覚めた。

彼は汗びっしょりで布団の上に座っていた。
放心状態だったが、夢だったのかと安心した。

汗ずくのパジャマを着替えようと脱いでいると、
右足の上部に痛みがある。

よく見ると、血が滲んでいた。
なんだ? と思って、無理な態勢で覗いてみる。

右足の尻の付け根に、はっきりと噛み痕がついていた。

血はそこから滲んでいたのだ。
ということは、夢と現実が入り混じっている。

彼にとって、恐怖以外の何ものでもないトラウマに
なってしまったという。


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       投稿 ひろみつさん(男性・大阪府)

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