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おい、今、何か言った? 怪談・逢魔が時物語「居残りの怪異」

東京N区にある某専門学校へ通っていたときの話。

そこはインテリアデザインの専門学校で、
毎日課題がとても多い。

その日も課題が重なり、授業中の作業だけでは
間に合わなかった。
仕方なく、放課後に居残り作業をすることにした。

独りで残るのも寂しいので、友人を誘った。
友人は「日が悪いんだよなぁ」とボヤいていたが、
彼も少しやり残したことがあり、二人で作業を開始。

私の席の真後ろに友人の席があり、縦に並んでいる。
課題は『製図』だったので、俯き加減の姿勢になる。
だから、お互いの姿は見えない。

図面を書くことに集中して、かなりの時間が経った。
それは突然だった。


床をすぅーっと、
何かが横切るのを目の端で捉えた。


同時に、誰かが席の横を通り過ぎたような気配を
感じる。

(あれっ? 誰か来たのか……?)

ふとそう思った瞬間だった。
ウゥゥゥゥゥゥ~……と、低い唸り声が聞こえた。
私は思わず振り返った。

「おい、今、何か言った?」
「いや何も言ってないけど、ウ~~って聞こえたよな」

「お前もか? 人の気配を感じなかったか?」
「ああ、誰か横を通った気がした」

後ろ席の友人も、まったく同じ体験をしている。
気味悪さを感じた私たちは作業をやめ、大急ぎで
教室から逃げた。

これで事なきを得たのだが、ひとつ気になることが。
それは友人が、朝学校に来るなり呟いたひと言。

「今日は日が悪いよ。日が悪いんだよなぁ」

訳のわからないことを口にしていたと記憶する。
居残りに誘ったときも、日が悪いと渋っていた。

友人は、朝から何かを感じていたのだろうか。


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