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テレビで確かに見た。怪談・逢魔が時物語「目撃者」

東京で、新婚生活を借家で送っていた頃のこと。

長女が生まれて間もないある日の夕方。
カミさんは台所、私は居間でテレビを見ていた。

すると、テレビが悲しいニュースを伝えてきた。
痛ましく、おぞましい事件だった。

捕まったが、犯人は車を盗んで逃げた。
しかし、後部座席に幼い子どもが二人寝ていた。

あろうことか犯人は子どもの一人を殺害し、
もう一人は置き去りにしたという。

犯人は検問で捕まったと、テレビで速報していた。
供述にもとづいて、子どもたちの捜索が始まった。
テレビには押収された盗難車両が映し出された。

私はちょうど子どもが生まれたばかりだった。
だから、親御さんの心境は痛いほど伝わった。

テレビを見ていると、カミさんが居間に入って来る。

「悲しい事件があったんだよ」
そう話し始めたが、カミさんの反応が奇妙だった。

「悪い犯人だね、でも、子どもは保護されたん
 でしょ? 良かったじゃない」
と言う。

何か変だった。話が嚙み合わない。

「なんでそんな結論になるんだ?」


「えっ? だってその車に子どもが乗ってたじゃない。
 助かった子どもたちなんでしょう?」


その時点では、殺された子も放置された子も
発見されていない。
テレビに映る車に子どもが乗っているはずがない。

私は慌ててテレビ画面に向き直った。
だが、もう車両は映っていなかった。

・・・さて、カミさんは何を『見た』のだろう。



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      投稿 とりびーさん(男性・千葉県)

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