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天井から女が降りて来る。怪談・逢魔が時物語「降下」

それは起きるには早い朝方のこと。
大阪は堺のマンションで起こった。

まだ布団にいた私は眠ったままの姿勢で、
ふと目を開けた。
いや、何かの異変を感じて目が開いた。

天井と押入れの天袋の間あたりに
「それ」は居た。


見知らぬ女の人が、ゆっくりと降りてくる。


なんだあれは……? と思った瞬間、
生後1ヶ月の赤ん坊が、突然激しく泣き叫んだ。

泣き声に驚いて、慌てて妻は息子に駆け寄る。
その時には、もう天井からの女は消えていた。

起きてから、函館の母から電話が架かってきた。
早朝に起きた奇妙なことを話したが、その時は
適当に聞き流されてしまった。

ところが、答えは1か月後に出る。
翌月、母から電話があった。

「先月からね、お爺さん、妹、父と立て続けに
 事故に遭うんだよ」

幸いにも皆、大きな怪我はなかったらしい。
不吉だから『見える』能力があるという知人に
相談したらしい。

すると、祖父の身内で、早く亡くなった女の人
ではないかと。

誰にも供養されず、寂しい思いをしているらしい。
気づいてほしいので合図を送っているのでは?
というのだ。

もちろん、立て続けの事故との関連は不明だが、
気にはなる。

そこで好きだったという和菓子を供え、
家族で手を合わせた。

「あんたの所には、何もなくて良かったねぇ」
 母はそう締めくくった。

母はすっかり忘れていた。
1ヶ月前に話した不可解な女の人のことを
もう一度話した。

そこではっと思い出したようで、慌てて時系列を
確認する。

私と赤ん坊が女の人を見たのは、祖父が事故に
逢う前日。

祖父の事故の翌日には妹、1週間後に父が事故に
遭っている。

私や赤ん坊が見たのは、祖父の身内だった女の人
かも知れなかった。

母は『見える』その知人にまた電話した。
すると。

「息子さんの所にも行ったみたいだねぇ。
 お孫さんにも泣かれてしまったみたいだよ」

母が詳しく話す前にすべてを言い当てられたという。

赤ん坊が号泣したことまで言われ、
言葉を失くしたらしい。



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       ・投稿 道産子さん(男性・大阪府)

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