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百物語を楽しんでいると。怪談・逢魔が時物語「やめて」

友人の貴子(仮名)が、何人かの仲間と部屋で盛り上がっていた。
場の流れというか、ノリで怖い話をみんなでしよう、ということに。

部屋の真ん中にはテーブルがあり、飲み物や菓子が広がっている。
その周りを取り囲むように、みんなバラバラに座っていた。

電気を消し、百物語のような形式で、誰かがしゃべったら
次に誰かがしゃべる、というやり方で怪談を披露しあっていた。

テーブルの前で、貴子は何人目の怪談を興味深く聞いていた。
と、そのとき。


「・・・・・・やめて」小さな声が近くでした。


男とも女ともとれる誰かの声だった。
中には怪談が苦手の者もいるだろうし、よほど怖かったのだろう。

誰かなと思って、貴子は周りを見わたしてみた。
しかし、みんな一心不乱に怪談を聞いている。
耳をふさいだりして怖がっている者はいない。

それに、貴子以外誰もその声には気づいていない様子だった。
気のせいかと、そのまま怪談を続けた。

すると今度こそ、はっきりと「やめて!」という女の声がした。
さらに、パーンッ! というラップ音も。
部屋にいた他のメンバーは男ばっかりで、女の声がするはずがない。

「おい、今やめてって声、聞えなかったか? お前か?」

隣りに座っていた男が話を中断して問う。
もちろん怪談が好きな貴子が声を出すわけがない。

貴子は自分の少し離れた後ろから聞えたと思った。
だが、隣の男はすぐそこで聞えたぞと、貴子の真後ろを指さす。
それは、初めの耳元に近いところでの声と一緒だった。

残念ながら、声を聞いたのは貴子と隣りの男だけ。
二人とも多少なりとも霊感らしきものがあるからか。

二人は顔を見合わせた。
「……やめとこうか」

怪談を取りやめたが、やめなかったらどうなっていたのだろう。



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          ・投稿 お杉ちゃんさん(女性)

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