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窓に貼りつくモノ。怪談・逢魔が時物語「電車の窓」

まだ小学生だった頃の話。
神戸のお婆ちゃんの家から、大阪I市の自宅へ
帰る途中でのこと。

夜の十一時過ぎ、電車に揺られていると眠くなる。
隣に座っている姉、母、弟や他の乗客の多くも
居眠りをしていた。

その時は、まだ自分だけは起きていた。

(みんな気持ちよく寝てるし、私も寝ようかな~)
睡魔に抗うことができなくなり、瞼が重くなって
きていた。

窓の外は真っ暗で、街の灯りが車窓を流れるだけ。
半分目を閉じつつも、向かいのシートの上にある
窓を何気なく眺めていた。

すると、目を疑うものが現れた。


電車の窓に、青白い手がペタリと張りついている。


初めは寝惚けているのだと思った。
両目を一度ギュッと閉じ、もう一度その窓を見る。

寝惚けではなかった。
間違いなくそこに青白い手があった。

閉まった窓ガラスの外、まばらな乗客の背後に
それはペタリと……。

細く痩せていた。
男か女かわからない青白い手。

何かを探るように、五本の指を尺取虫のように
動かしながら、ズズッ、ズズッとガラス面を
ずり上がっていく。

信じ難い光景だった。
もう、何がなんだかわからなくなった。
両目を最大限に見開いて、見詰めるしかなかった。

一分経つか経たない頃だったと思う。
青白い手は、すっと下へ落ちるように消えていった。

はっと我に返り、横の姉をそして母を起こす。
必死になって、今見たことを話す。

姉も母も、当然信じてくれなかった。

    投稿:ビャッコノムスメさん(女性・兵庫県)



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