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誰かの家を探している。怪談・逢魔が時物語「声」

ある夜中のこと。
ウトウトと寝ていると、家の前を三人組の
年配の男女が大きな声で喋りながら歩いている。

「・・・そうだ、そうだ!」
「たしか、この向こうだろ?」

何を喋っているかはわからないが、
静かな夜にはよく響く。
うるせぇなぁ! と思いながら、耳をそばだててみた。

「この道じゃなく、向こうの道じゃないの?」

女らしき声でそんなことを言っている。
誰かの家を探しているのだろうか。


「明日なら、連れて行けるな?」


男の声に、他の者も同調している風だった。

こんな夜更けにうるさ過ぎるので、私は起きて
四つん這いになり、そっと通りを覗いてみた。

だが、街灯に照らされる通りには誰もいない。
隣近所も明りが消えていて真っ暗だった。

次の日、町内会の組長から、ある家のご主人が
亡くなったとの連絡。

しかし、私には昨夜の変な連中のことが、
妙に気になった。
話の辻褄がどこか合うのだ。

亡くなったのは私の家の通りではなく、
その奥の通りの家。

「明日、連れて行けるな」
という声の意味とも合致する。

無理やり故人と結びつけるのは早計だが、
位置関係は符合する。

それに葬儀の日。
町内の人達が焼香している時、近所のおばさんが
目撃した。

この近辺では見たこともない男女三人組が、
駐車場の隅にいたのを。

遠方の参列者か、葬儀の関係者かと思ったそうだ。
しかし、いつの間にか消えてしまっていたという。



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       ・投稿 うなぎ犬さん(男性・山梨県)

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