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深夜の売り場巡回で。怪談・逢魔が時物語「あいさつ」

私の仕事は設備関係である。

だから、その日も開店前のデパートで空調の
調整をしていた。

もちろん開店前の早い時間だから、
お客も店員もいない。
無人の店内は森閑としている。

デパートやスーパーの天井には、その昔は天井に
◎型をした丸い空調の機械が埋め込まれていた。

その送風口から異音するので、修理をしていたのだ。
やっと修理が終わり、まだ時間はあったので
他にも音の出ている機械はないかと、店内を
見て回っていた。

照明も落としている暗い店内に、女の人がいるのを
見かけた。
超早出の店員さんかなと思った。

「おはようございます!」
できるだけ元気に挨拶をした。

「おはようございます」
向こうも小さな声で挨拶を返してくれた。

数十メートル離れてはいたが、開店前の照明の
無い中、早朝出勤も大変だなぁと思いながら
点検を続けていた。
  
空調の仕事が終わって、デパートはいつものように
開店した。

店内に全照明が入り、店内は煌々とした明るさに
満たされる。

もうひとつ裏の設備を見るため、私はさきほどの
売場を通った。

私が挨拶の声をかけ、返事をしてくれた
「女の人」がまだそこにいた。


店員ではなくマネキンだった。


ちゃんと返事をしたのに……。

一応、販促課でマネキンの交換をしてる人が
いたかを訊いた。

そのマネキンは、一週間前からそこに出ている
ということだった。

マネキンにも、愛想の良いのがいるのか。



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             ・投稿 PITさん(男性)

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