自分の弱さを知る(15)

一般人ならいざ知らず普段は辛辣で鳴らしているセレブリティたちもこぞってマスク氏を称賛している。これはどういうことか?イーロン・マスクを称賛することは人々にとっても彼らの名誉を得ることにつながる。みずからの集団の権威を高めることにもなる。だからこそ称賛する。

むろんマスクばかりではなく各界の「カリスマ」達に対しても同様に称賛するのである。実力者に対してはすべからくマスクのようになることを期待する。そのように期待された者は当然のことながら期待に応えようと努力し、自分を期待してくれている人々らに何らかの寄与をしなければならないだろう。かくして実力者同士の”与えること”の競り合いが起こる。

これは待望とは名ばかりの「圧力」と同義なのだが、いっぽうで称賛したからといって贈賄には当たらず、またその社会的価値が下がることもない。周知の通り多くの「富豪」や「カリスマ」、「俊英」等々の人中に屹立した個の類いが人々の称賛に相応しくあろうと心をついやしているのである。

富める者は惜しみなく与え、ますます富む。こんな話は人類有史あり続けていることであり分かりきっていることではあるが、かのように私たちはじつは人間をライフヒストリーの類型で理解している。この点に留意しなければならない。

だから、このたとえはマスクばかりではなくトランプや前澤友作にあてはめてもよいのだが人々らは特定した”個”に勝者の称号を与えることによって、ことあるごとにそのような誰かを称賛し、人々(ここで指しているのは”ネット民”)はみずからの権力を高めるためのこの寄与があたかも習慣以上の義務であることを他の者らに知らしめるのである。

<続く>

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