自分の弱さを知る(7)

エリクソンは、このアイデンティティの混乱(confusion)により陥る典型的症状が勤労感覚の消失であると述べている。

ある日突然仕事をやめてSNSやネットゲームや読書ばかりをするようになる等々、傷ついた者の”自己破壊的な”活動に没入する例は個人的にも見覚えがあり過ぎるというか、じつはそう珍しいものではない。

この躓いてしまった者をまた社会の現場に復帰させるのは可能か?

…アイデンディティの混乱は集中力の欠如を伴うだけではなく、競争への過剰な意識と、同時に嫌悪感を伴う。ここで問題としている患者は、ふつう知的で有能であり、それまでは事務的な仕事や学業やスポーツなどにおいて成功を収めていた場合が多いが、いまや仕事や練習、人付きあいなどの能力を失ってしまい、その結果、社会的遊びという最も重要な機会を失い、漠然とした幻想や不安からの最も重要な逃げ場を失っている。

アイデンディティ/エリク・H・エリクソン

この一節なんか私の胸にびっしびし迫ってくるのだけど。

ふとした拍子にそれまでの生き方が通用しなくなることがある。複雑な人間関係の中で自覚もなくしくじって、訳もわからないままに没落することだってある。あたかもこの世界は自分の望んだ風にだけは絶対にならないという法則があるようだ。そしてある時に心がポッキリ折れてしまう。このことは「勤勉さの拡散」と表現される。

エリクソンはこのような精神の危機に陥った患者を救うのは困難をきわめると、彼が自己の内にふたたび勤労感覚を発見するまで手引きするのは生半可ではないと。ハッキリとは言わないまでもやはり言いたがっている。

<続く>

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