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中野、東中野、中野坂上

私はかつて中野坂上に住んでいたのだけど。引っ越してから3か月ほど経って、その間にすっかりあの場所に惹かれてしまった。

以前から中野坂上には何度か足を運んでいたが、実際に住んでみるまで、周囲の土地の位置関係を正確に把握できないままだったため、坂上は奇妙に孤立した場所のようなイメージがあった(若い頃はチャリンコを買う発想がなかったもので生活上の移動はバイトで支給された定期券の範囲内にとどまっていた)。しかし、住んでみると一気に視野が広がり、我が理想の地を得たりと感じるまでになった。

18、9のときに、ほんの一瞬だけバレリーナの子と付き合っていた時期があって、それだって当時から数えて10年くらい前だけど、早稲田にいっていた先輩と3人で、坂上のどこかの焼肉店にいったことがあった。そのことをふと思い出して、まだあるか確かめるために行ってみたものの、もう潰れてなかった。

あの頃の思い出は、すべて、自分の若さによってもたらされてた恵みのようなものだ。ほんらいなら出会うこともなく、それゆえに交わることもないはずの、不思議なつながりに触れることができた。そして私は凄まじいスピードで彼ら、彼女らの前を通り過ぎていったのだった。すれちがい、なにもものにできないまま。

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