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鉄道写真とOM SYSTEM

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OM SYSTEMを知り尽くしているプロカメラマンが、性能や独自機能、その使いどころを分かりやすく解説します。機材の使いこなしや、追加機材の選択の大きなヒントになるでしょう。
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#OMD鉄研

<連載> 小竹直人・原初の鉄路風景 Vol.1 信越本線貨物支線

 私は10歳まで新潟市東区の大山町で過ごした。実家の玄関を開けた先には数本の煙突が聳え、常に煙が立ち上がりその風向きによっては妙な匂いがしていた。夜になれば煙突やその工場群はライトアップされ煌々と夜空を照らし、不気味な様相だったと記憶していた。今風にいうなら、“工場萌え~”的な光景だ。  その工場とは、焼島駅に隣接する北越製紙(現・北越紀州製紙)だった。かつて焼島駅から東新潟港駅(1.7㎞)まで貨物線があり、1998年11月まで貨物列車が運行されていた。その貨物線が実家の傍ら

<連載>OMと旅する鉄道情景(第9回/神谷 武志)GROUP K.T.R

「失われた鉄道情景」の美を求めて ~旧士幌線・タウシュベツ川橋梁に行く~ 水底深く眠る幻の鉄道橋 静かな山あいの温泉町・糠平郊外、ダム湖の対岸に、タウシュベツ川橋梁はあります。 士幌線は国鉄民営化直前の1987(昭和62)年3月23日に全線が廃止になりましたが、実はそれ以前の1955(昭和30)年8月、糠平ダムの完成にともない、誕生した糠平湖西岸へ一部線路を付け替えした歴史がありました。 この橋梁は、水底に沈んだ旧線にかかっていた鉄道橋。列車を支えることがなくなった70年

<連載>OM と旅する鉄道情景(第8回/高屋 力) GROUP K.T.R

記憶色を再現出来る「i-Finish」モードで被写体を鮮やかに 「i-Finish」モードとは? OM SYSTEMのカメラに搭載されている「i-Finish」モードは、前身のオリンパスが開発した記憶色を再現する撮影モードです。 開発時のテーマは「撮影時の感動を思い出せる写真が撮影できる」というもの。昔から特に青系統の色再現には定評があり「オリンパスブルー」なんて言葉もあるほど! 瀬戸内の貨物列車を狙う 山陽本線の有名撮影地である周防大島にかかる大島大橋。 この橋の上

<連載>OM と旅する鉄道情景(第5回/高屋 力) GROUP K.T.R

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO で夕刻を狙う ●M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROとは? M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO は、35mm換算300-800mmの超望遠ズームです。内蔵テレコンバータを使用すれば、1000mm相当。さらに外付けのx2テレコンを装着すれば、35mm換算20

<連載>OMと旅する鉄道情景(第4回/牧野 和人)GROUP K.T.R

磐越西線で陽光と対峙する  JR東日本 磐越西線では春から秋の間、土日祝日を中心にC57形蒸気機関車が専用の客車をけん引する「SLばんえつ物語」を新津~会津若松間で運行している。路線は阿賀野川の流れに育まれた豊かな自然が彩る西会津を通る。季節それぞれに沿線の魅力がある中で、日脚の短い秋には山間で光と影が交錯して印象的な眺めを紡ぎ出す。 刻々と表情を変える橋梁界隈  快晴で迎えた週末。午後の新潟行き「SLばんえつ物語」は、流れの上に架かる下部トラス橋梁が雄々しい一ノ戸川の

<連載>OMと旅する鉄道情景(第3回/牧野 和人)GROUP K.T.R

国鉄色の電車と森林浴 懐かしの車両で賑わう伯備線 鉄ちゃん(鉄道愛好家)の間で中国山地を縦断する伯備線がアツイ。特急「やくも」に使用されている元祖振り子式電車の381 系をはじめ、多くの営業列車が昭和中後期に製造された国鉄型車両で運転されてている。381 系は近々新型車両への置き換えが予定されており、同車の勇退を惜しむ意味合いを込め2022(令和4)年に1 編成が車体をクリーム色の地に赤い帯で装った国鉄特急色に再塗装され、原色塗装車が充当される列車はJR 西日本のホームペ

<連載>OMと旅する鉄道情景(第1回/神谷 武志)GROUP K.T.R

「えちごトキめき鉄道」に輿入れしたオイラン車を撮りに行く ●オヤ31ってなに? 2023(令和5)年3月、車両限界測定用試験車・オヤ31 31が、えちごトキめき鉄道に譲渡されました。 「建築限界測定用試験車」という聞きなれない名称は、新線開業時などに設備関係が列車に接触する危険性が生じていないかを検査・測定するための専用車両を指します。その測定は、車両から上体ぐるりと角のように検知針を突き出し、それが接触しないかどうか調べるスタイル。アナログだけど絶対確実な検査とも言えま

<連載> 小竹直人・OM-1の魅力 Vol.5/ 深度合成

マイクロフォーサーズ(M4/3)の利点は被写界深度が深いことです。比較するとM4/3でF8はフルサイズのF16に相当しますので、広角側で適度に絞り込むと簡単にパンフォーカスになります。画面全体にピントが合っている写真は見ていて気持ちがいいものです。とはいえ、望遠レンズやマクロ撮影でパンフォーカスにするには限界があります。それを解消してくれるのが深度合成機能です。 パンフォーカスと深度合成 8年ほど前にニコンプラザ新宿(現ニコンプラザ東京)のギャラリーで開催されていた徳川弘

<連載> 小竹直人・OM-1の魅力 Vol.4/ プロキャプチャーモードとライブND

プロキャプチャーモード OM-1の連写機能はE-M1MarkⅢの60コマ/秒から120コマ/秒!(AF/AE固定)に倍増しました。それに伴ってプロキャプチャーモードも120コマ/秒に設定すると最大で70コマ、すなわちシャッターを押した瞬間から0.35秒さかのぼって記録可能になりました。 これまでプロキャプチャーの作例では、野鳥の飛び立つ瞬間やカメレオンが餌を捕獲する瞬間などを目にしてきました。とても画期的な機能で、偶然でも撮れない瞬間を撮影可能にしました。 プロキャプチャ

<連載> 小竹直人・OM-1の魅力 Vol.3/ デジタルシフト撮影

デジタルシフト撮影の魅力 私が最初に手にしたOM SYSTEMのカメラは、OM-D E-M5MarkⅡで、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROとの組み合わせでした。フルサイズの同一画角相当のレンズも所有していましたが、あまりのヘビーさにストレスを感じていたことからE-M5MarkⅡを広角専用機とし、このフルサイズの広角ズームは手放しました。 それをさらに後押ししたのはOM SYSTEM独自のデジタルシフト機能でした。当時シフトレンズを私のレン

<連載> 小竹直人・OM-1の魅力 Vol.2/ ライブコンポジットを使った新たな表現

ライブコンポジットとは 言わずもがなですがライブコンポジットとは比較明合成のことで、いまや星景写真においてはマストアイテム。OM SYSTEMカメラの代名詞的な機能です。鉄道のシーンでも星景を取り入れた列車の光跡狙いにも使えますが、ちょっとベタな感じがしていたのでOM SYSTEMのカメラを使い出してからも、しばらく使わなかった機能でした。 ところが、ある雨の日のことでした。雨がいつ止むかと猫の額のような拙宅のベランダに出ていると、シトシトと雨に打たれた葉々に滴る雨粒が輝

<連載> 小竹直人・OM-1の魅力 Vol.1/ 私のカメラ選び

文、写真:小竹直人 OM-1の魅力とはなにか。本題にはいる前に、ちょっとだけ私自身の鉄ちゃん経歴を書きます。 私がカメラに求めているもの1990年より中国の鉄道取材を始めSLから満鉄遺構など撮影に取り組んできました。コロナ禍によって失われた3年間を引いたなら丸30年間、絶え間なく日本と中国を往来し、渡航回数は90回以上になりました。 中国での撮影は過酷なものでした。特に内陸北部では、冬になると氷点下40度にも達し、砂塵や粉塵が絶え間なく吹き付けてつけてくるのです。バッテリ