見出し画像

6歳の息子とフィルムカメラ



懐かしの
インスタントカメラを1台
息子に託して旅行に出かけた

昔、修学旅行ともなれば
2.3個買って持参したアイツだ

一通り使い方を説明したら
6歳の息子は
『怖い』と言った

何が撮れたか
ちゃんと撮れたか
確認できないなんて怖いね

それに撮ったものを見るには
旅行から帰って
写真屋さんに持って行って
お金を払って
待って待ってやっと
出来上がることにも心底驚いていた

はじめ、慎重派の息子はなかなか
シャッターを押そうとしなかった。

だから
『好きなものを
好きなように撮っていいよ』と伝えた

そしたら一枚撮った。
一度撮ると楽しくなったようで

何でもパシャパシャ
気軽に撮りだした。



そうなると親というのは
不思議なもんで

27枚しかないんだから
考えて撮りな
お金かかるんだから
大事に一枚一枚撮って欲しいなんて
勝手に思うもんだ
そんな道端のよくわからない置物じゃなく
観光地に来た!!とわかるこれをさ……


中華街のよくわからない置物



たった30秒前に
『好きにしていいよ』と
笑顔で言ったのに
とんだ嘘つきやろうだ。
親心ってめんどくさい。

もうここからは
その湧き上がる
めんどくさい親心を必死に
抑える我慢の時間が続く

フィルムカメラよ
なぜお前は27枚しか撮れないのだ
なぜ買うのにもお金がかり
現像するのにもお金がかかるのだ

なぜそんなに不便なのだ。

そもそも
撮る価値のあるものってなんだ?
ゆっくり考えて撮るってなんだ?
お金に値する写真ってなんだ?

そんな謎の思考に及びながらも
旅行中、どうにか私は
6歳の写真家の撮りたい欲求を
邪魔せずに帰路についた。

現像してみたら、案の定
ピンポケ写真やフラッシュ不足で
『いい写真』はほとんど無かった。

でも
息子にしか切り取れない世界が
そこにはあった。



私と彼が見ている世界は違う
そう思わせてくれた。

何が写っているか
出来上がるまでのワクワク感を思い出した
昔は『出来映え』なんて気にせず
バシャバシャ撮ってたな、自分。

時間がかかる・やり直せない・高い
そんな不便さこそ、今の暮らしの中で
大事にした方がいいのかも、とも感じた

このめんどくさい親心は
どんな場面でもひょっこり顔を出す

可愛い我が子のため…。
と言えば聞こえはいいが
きっとそれは
効率よく・早く・より良くしたいという
自分自身の欲求に過ぎない。

その自己欲求をどう抑え込んで
我が子の成長過程を
写真の現像のように時間をかけて
ワクワク待てるか

2023年も結局同じ課題になりそう。
いや、きっと子育てが続く限り
この課題と向き合い続ける。

息子がいけすかない彼女と付き合えたと
満面の笑みで報告してきた時。
ダサいタトゥーを入れたいと言い出した時。
せっかく入った学校を辞めたいと言った時。

自分は親としてどんな言葉をかけられるか

その課題と向き合う練習のために
次の旅行でも
またフィルムカメラを息子に持たせよう

みんなは我が子のフィルム撮影
どれくらい見守れそう?

この記事が参加している募集

最近の一枚

サポートして頂けましたら、そのお恵みをぎゅっと握りしめて。こんな時でもお店を開け続ける地元の飲食店にダーっと走り、キンキンのおビールをガーッ飲みながら、明日への英気を養います。カウンターで出会ったノリのいい奴に1杯おごる気持ちでぜひ。