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カブトムシ、昆虫採集、プールサール、少年時代

息子が長い夏休み中なので、昼間の業務試飲会に一緒に出掛けることが多い(関係者の皆さん受け入れてくださりいつもありがとうございます)。そんな過日の試飲会で遭遇したワインがこれ。
 
液体に鼻を近づけると、夏の森の香りがした。菌類によって泡立った樹液の香り。そこにはいつもカブトムシやらクワガタやらカナブンやらスズメガやらスズメバチやらがいて昆虫少年のバラダイス。会場の端で持参した本を読んでいた息子にも嗅がせてみると目をむいて「あ!カブトムシの!」。
 
個人的にはカブトムシ香はいくつかあって、一つは飼育中の不潔な昆虫マットの臭い、一つは初夏に発生するアカハツというキノコの香り、そして真夏の夜の森の樹液の香りだ。最後のそれが、このワインに感じられる。僕にとっては少年時代の夏休みの香り。そして今は、息子と夜間昆虫採集に行く都会の森の香りだ。もちろん100%ポジティヴなアロマ。
 
これを8月の試飲会に出してくるというインポーターさんのセンスがまた、ね。
 
あと5年もしないうちに、息子は親父との昆虫採集より楽しいことを見つけたり、今よりずっと忙しい夏休みを過ごしたりするのだろうなと想像することがある。僕もそうだった。だけど毎年夏に、不意に風に乗って漂ってくる樹液の香りは、いつも小学5年生の夏休みに僕を連れ戻す(そして息子が生まれて、僕は出戻り昆虫中年となってしまった)。このジュラのプールサールもまた、今後ボトルを空けるたびに二人で足繁く通った昆虫採集の記憶を呼び起こすのだろう。

できたら11年後に、このワインを息子と二人で飲んでみたい。その頃、まだ二人で昆虫採集してたりして。ボルネオ島とかで。

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