3000文字チャレンジ!第106弾!【冷蔵庫】
ボクがはじめて見た顔は、おじいさんの顔だったよ。真っ白の髪を後ろに流し、なにか甘い香りがする油のようなもので固めていたよ。鼻と口の間に白い四角形のヒゲをはやし、唇はうすく精気が薄い桃色、顔のあちらこちらには、クッキリとおじいさんが生きてきた証のシワが刻まれていたよ。おじいさんの目尻は重力に負けたように垂れさがり、目は黒い縁取り、真ん中は深い焦げ茶色、おじいさんはしゃがみこみ、ボクに言ったよ。
今日からよろしくな、サンダイメ。キレイでピカピカの氷を作ってくれよな。
ボクの頭をぽんぽんと叩くおじいさんの顔は、柔和な微笑みを浮かべていたよ。ボクの名前はサンダイメなんだよ。
おじいさんがボクに手をかけ、ガバと音がしたと思ったら、ボクの視線はグルンと移動したよ。おじいさんがボクの体内をイジり、ゴトゴトと何かを入れているのが分かったよ。
ボクは氷ってヤツを作ればいいんだね。それがボクの仕事なんだね。でも氷ってナンだろう、ボクは知らないよ。声を出して聴くこともできないよ。優しそうなおじいさんの期待に応えられるかな、心配だよ。
しばらくして、ボクの視線は元に戻ったよ。おじいさんが優しく、ボクの頭を優しくポンポンと叩き、ボクから離れていったよ。
パチンと音がしたと同時に、目の前が暗くなったよ。コワイとは思わなったよ。ボクの体の中でグイングインと、ナニかが動いているんだよ。ゴウゴウと音をたてて動いているんだよ。
ボクの目の前が少しづつ明るくなってきて、周りを観察できるようになったよ。銀色の壁があったり、真っ直ぐ伸びて途中から、U字に下がっている銀の細い棒が見えたよ、おじいさんが透明なナニかをだしていた装置だよ。茶色くキラリと光る平らな木がちょっとした空間をあけ、端から端まで通っているよ。木はスベスベしてるのかな、ザラザラしてるのかな、触ってみたいよ。
目の前が少しずつ茜色に侵食されてきたとき、おじいさんがボクの前にふたび現れたよ。
どれどれ出来ているかな。
ガバッという音が聞こえると、再びグルンと視線が移動し、パタンという音が聞こえると視線は元に戻ったよ。おじいさんの胸より大きい透明な塊を、小さいおじいさんが大事そうに抱えているのが見えたよ。
できてる、できてる、とおじいさん言ってくれたよ。大きい透明な塊が氷なのかな。ボクは氷を作れたよ、おじいさんの役にたてたよ。ヨカッタヨ。
おじいさんは大きい透明な塊の氷を、銀色の台の近くに持っていき、木の持ち手、銀色の鋭く尖った物がついてる道具で、透明な塊をシャランシャランと削りだしたよ。透明だった氷の塊が削られることで、さらに透明になり研ぎ澄まされ、すべての光を拒絶するような表面になったよ。おじいさんは削った氷の塊を、キッチリカッチリした大きさの四角にしたり、大きく雑な四角にしたと思ったら、木の持ち手、先端が鋭く尖った道具で、雑な四角い塊をカンカン、ザンザンと削っていったよ。雑な四角だった物が、どんどん丸くなっていくよ。おじいさんの魔法使いだったんだよ。ボクはおじいさんの行動から目が離せなくなったよ。四角を丸くしたときにできた、コマゴマした大小様々な氷を、おじいさんは集めて、四角くの銀色の箱にいれたよ。おじいさんが、銀色の箱の横にある棒をもち、棒をぐるぐる回しだしたよ、ガリガリっボリボリっと、すごい音がしたよ。おじいさんが銀箱の箱から、一回り小さい銀色の箱を取り出したよ、大小様々な大きさだった氷が粉々に砕かれて、細かい氷になったよ、キラキラ光を乱反射させ、光が乱舞しているよ。
おじいさんが作ったキレイな四角い氷や、丸い氷、キラキラ光る細かい氷を銀色の壁を開き、丁寧に壊さないように、ゆっくりした動作で静かに入れたよ。
おじいさんが、フッと目の前から消えたよ。
おじいさんが戻ってきたよ、黒と白のコントランストがきっちりしている服を着ているよ、シャンと恰好よくなって戻ってきたよ。
頭から糸が天に伸びて吊るされ、おじいさんの背骨が伸びているよ。おじいさんが透明の物体を真っ白な布で磨いたり、銀色の物体をカチャカチャわけたり、くっつけたり、おじいさんが作業していると、カランカランとした音が聴こえ、ヌ~っと人がはいってきたよ。
おじいさんの服と似ているけど、茶色で肩のあたりがカッチリした服をきて、黒色にすこし白色が混ざっている短めの髪の毛。眉毛が濃く、目は丸くクリクリして、鼻がデカく一番目立っているよ。キラキラした木の前におじさん座ったよ。入ってきたおじさんが指を2本を突きだしたよ。
おじいさんが静かにゆっくり動きだしたよ、おじいさんが両手で持つと、丁度同じ大きさになると思う透明な円柱の物に、銀色の壁から透明な丸い氷をいれ、トンッと茶色い液体が入った、下のほうは丸くさっきっぽが細くなっている物をおき、茶色の服を着たおじさんが頷いたよ。おじいさんが茶色の液体をゆっくりと、しっかりと、透明な丸い氷の表面に厳かに注いでいるよ。トトトッと心地よい音が聴こえてきたよ。茶色い服を着たおじさん、ニッコリ笑い頷いて、おじいちゃんから透明な円柱の物を受け取り、ゆっくり傾け、口につけ、ゆっくりゆっくり茶色い液体を飲んだよ。飲み込んだ瞬間、茶色い服を着ているおじさん、破顔一笑。うんうん、と何度も頷いたよ。
茶色の服のおじさんを皮切りに、新しい人がポツポツ入ってきたよ。
おじいさん新しく入ってきた人と、軽やかにお話をして、お話をするたびに色々と作業をし、キラキラした木の前に座った人に、色々な形の物に注いだ液体を提供しているよ。
細長いシュっとした透明な物に、透明な物の上限まで、キチンと四角にした氷を、静かに5~6個いれ、おじいさんの手より大きい細長い物から、透明な液体を注ぎ、おじいさんの手の平ほどの大きさの黄色い物を、木の板の上で切ったよ。細長い透明な物に、おじいさん力一杯黄色い物を搾ったよ、切られた黄色い物もいれたよ、細長い透明な物に、透明な柔らかそうな物から、プシュっと音をさせ、ゆっくり静かに透明な氷を避けながら、透明だけどシュワシュワしている液体を注いだよ、銀色の細い細い棒で底のほうから、ゆっくりと音をたてずに、静かに混ぜたよ。頭の中央から黒髪が分かれているお姉さん、細長い透明な物を受け取って、キラキラしたピンク色の唇につけ、ゆっくりと液体を飲んだよ。お姉さんの目尻がさがって、ニッコリしたよ。
若い男性と若い女性がおじいさんと話し、おじいさんが頷いてから作業に取り掛かったよ。銀色のピカピカに光った道具、おじいさんの手の平ふたつぐらいの高さ、底がちょっと細く、中央が膨らみ、一番上は小さく丸くなっているよ。銀色の道具の上部がパカっと割れ、おじいさん氷を何個かいれたよ。赤色、青色、無色、黄色の液体を、銀色の道具に注いだよ。銀色の道具の上部をきっちり閉め、おじいさん銀色の道具を両手で持ち、目の前まで持ち上げたと思ったら、銀色の道具を振動させたよ。振動されている氷の音だけが静かなに鳴っているんだよ。銀色の道具の小さい丸い部品を外したよ。丸い透明な下部、そこから頼りなく伸びる透明な棒、その上には三角形を反対にしたような物に、おじいさんが銀色の道具から液体を注いだよ。注がれた液体が虹色なんだよ。若い女性の目がまん丸になって、小さいお口がポッカリあいているよ。ボクも驚いたよ。
おじいさんは静かな魔法使いなんだよ。おじいさんの動きはとても丁寧でゆっくり動くんだよ、だから音が微かにするだけなんだよ、他の人の行動を、音で邪魔しないんだよ。作り上げた液体は他人を喜ばせるんだよ。
ボク毎日がんばって氷を作るんだよ。だからおじいさん、静かに音をたてずに寝ころんでいたらダメなんだよ。起きて、ボク頑張って氷を作るんだよ。
ブログもやってます、麺、燻製、酒。
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