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複数回受験合格者座談会〜人生で一番つらかった「あのとき」の話をしよう

9月5日司法試験、そして10月8日予備試験(論文)と相次いで、司法試験・予備試験関連の合格発表が行われました。合格の一報に胸を撫で下ろす人がいる一方、不本意な結果に悔しい思いをされている方も多いのではないでしょうか。

ちょうど夏の終わりから秋へと季節が移り変わる頃。OLSでは急遽、複数回受験合格者のみを集めた座談会という画期的な試みを行われました。

司法試験不合格を体験したからこそわかる辛さ、合格に向けて軌道修正するために実際にやったこと、仲間がいない孤独との付き合い方……数々の困難を乗り越えて再チャレンジを成功させた先輩合格者たち。

その彼らから、来年に向けてリスタートを切る後輩への熱いメッセージをダイジェスト版でお送りします。

【今回の座談会参加者(敬称略)】

麦畑
OLSアドバイザー・弁護士。司法試験2回目合格。経済法選択。73期。オールFからの復活を果たした経験を元に、「受験生時代の自分が欲しかったもの」を考えた講義を心がけている。

すだち
OLSアドバイザー・弁護士。司法試験3回目合格。経済法選択。72期。OLSでは図の書き方、メンタルケアなどの講座を担当中。受験3回目の年は勉強法を根本から変え、見事最終合格を果たした。

夏目蓮
OLSアドバイザー。司法試験2回目合格。知財選択。74期。論文の書き方講座などを担当中。初年度はまさかの短答負けを喫したため、短答で失敗しちゃった人向けに話したい。

ひまわり
OLS出身。司法試験3回目合格。労働法選択。75期予定。2回目短答落ちというどん底から、なんとか軌道修正に成功した。


試験会場には魔物がいる。

麦畑:
はじまりました!複数回受験合格者座談会。司会は僕、麦畑が務めさせていただきます。

さっそくですが、みんなに不合格だった年の話や敗因について訊いてもいいかな。不合格と言ってもいろんな落ち方があるので、不合格経験があるからこそ苦労をしたことを話してほしいなと思います。


夏目:
僕の場合は、本番の受け方を間違えたのが最大の敗因でした。勉強面については質も量も十分に確保していましたし、実際に上位合格を狙っていたんですけど……その気持ちが強すぎて空回りしてしまったというか。意気込みすぎて、試験本番でスタミナ切れしてしまって。

模試の問題やスケジュールに感覚を合わせて受けていたのもよくなかったと思います。本番の独特の雰囲気や難しい問題に呑まれて、会場でパニックになりました。短答の時点で落ちたのは自分でもわかっていて、そのときは茫然自失でした。まさか自分が落ちるとは思っていなかった


麦畑:
「試験会場には魔物がいる」って、よく言いますよねえ。僕は1回目、論文手応えあったはずなのに、蓋を開けてみたら全部Fでした。それで、書いた再現答案を先生方に見てもらったら作文だと言われちゃいまして、それこそ足元からすべてが崩れ去るような感覚に襲われました。

要するに、論点を見つけて喜ぶくらいのレベルでとどまっていて、答案の基本が全然できていなかったんですよ。


すだち:
私は短答は得意だったんですけど、苦手な民事系で足をすくわれました……。


ひまわり:
私は3回目合格ですが、2回目はまさかの短答落ちでした。そのときはさすがに何が正しいのかわからなくなって落ち込んで、いろんな先生に相談しに行きました。でも、ともしび先生(※OLSアドバイザー)に答案を見てもらったときに「論文の合格率は20%」と言われて。そこではじめて、これまでの勉強方法そのものが間違っていたことに気がつきました。

自分の弱いところ・苦手なところから逃げない覚悟が合格には必要でした。

麦畑:
ともしび先生の愛のムチを正面から受け止めたのは偉い。ひまわりさんは、そこで勉強方法を変えたんですね。


ひまわり:
各科目、「理解はしているけれど書けないもの・書ける自信がないもの」を基本書の目次から「苦手なものリスト」としてリストアップし、重点的にインプットを行いました。

あとは2時間で答案を書いて、安田先生(※OLSオーナー)やともしび先生に添削してもらうサイクルの繰り返しです。論文対策に関しては1年間それだけしかやっていません。

また苦手な短答は徹底的にやりました。科目別足切りで苦い思いをしたので、過去問を年度別で時間をはかって解くなど解き方も研究しました。得意なところと苦手なところがハッキリしていたので、自分の弱点をとことん潰しに行った感じです。


すだち:
私の場合は民事系が原因で落ちたのがわかっていたので、苦手な民訴を頑張ることにしました。民訴は基礎がわかっていないことに気づけたので、基本書を頭から読み直しましたね。

他の科目もそうですけど、あとはひたすら過去問を書いて、ローの先生たちに添削してもらったり、自己添削したり。自分に何が足りないかを分析しているうちに、自分の癖が見えてきました


麦畑:
第三者の視点を入れる、自己添削をするっていうのは大事なポイントだと思います。思考の見える化・言語化ができますから。

僕も合格した年は、色んな人に頭を下げてアドバイスをもらって、勉強計画や教材を見直すところから始めました。

そのとき、ローの先生からもらったのが「主体的に勉強しろ」というアドバイスです。再挑戦を決めた年までは受け身だったんだと思います。

だから合格した年は「自分が受かる」という意識を持って、積極的にゼミやOLSに参加して勉強しない言い訳を潰しました。あとは起案数が少なかったので、ひたすら書いて再現答案と比較検討、さらにローの先生に見てもらっていましたね


夏目:
僕は勉強法のコアな部分は変えなかったんですけど、手を広げすぎないように気をつけていました。すでに過去問をやり尽くしていたこともあって、得意な民事系はあえて後回しにして苦手な科目に集中しました。


麦畑:
みんな苦手なところに正面から取り組んでいるのが共通点かな。たしかに苦手なところをやるのが効率がいいですよね。

リアルで受験仲間がいないのがつらかった

すだち:
受験生活で一番つらかったのは、リアルの世界で受験仲間がいなかったことです。もともと小規模ローで、しかも卒業できた8人のうち女性は自分ひとりでした。ゼミも組めないし、一緒に頑張る人もいなかった。私、元々の性格的に落ち込みからの立ち直りは早いほうなんですけど、さすがに「うわあああ」って思いました……。


夏目:
僕も仲がいい同期がみんな受かっていなくなってしまって、疎外感を感じました。仲間の合格は嬉しかったけど、一人取り残された感じがつらかったです。


ひまわり:
私も友人全員が1回目・2回目で受かって、3回目のときは仲間がいませんでした。しかも、うちのローは「短答落ちるのはありえない」という雰囲気だったので、2回目で短答落ちしたときは気分がどん底でしたね……。


麦畑:
僕も周囲に相談できるような受験仲間がいなくて、悩みすぎてメンタルがやられそうになりました。

僕、2回目合格なんですけど、オールFがトラウマになって勉強を再開したのは4年目。2回目・3回目は受けていないんです。でも、「ここで逃げたら絶対に受からない。メンタルがガタガタでも受かるぞ!」と一念発起して。

メンタルが弱いのはしかたがないので、それでも受かる仕組みを作ろうと考えました。OLSやTwitterで勉強仲間を作ったり、さらに勉強記録を公開して自分にプレッシャーをかけたりしましたね


夏目:
僕もTwitterで勉強仲間ができて、だいぶ救われました! あと仲のいいローの後輩を誘って一緒に勉強したり、後輩向けにゼミを開いたりしていましたよ。


ひまわり:
私もOLSに入って先輩や仲間を作って、メンタルを保ちました。コロナもあって、対面で人と会えなくなったのはつらかったですね。なんとかオンラインで人とのつながりを保てるように工夫していました

受かった年の「リアル」〜本番、途中で席を立って帰りかけました。マジで。

麦畑:
じゃあ、いよいよ受かった年のことについて訊いてみましょうか。

まず自分の話から。僕、本当にメンタルが弱いんですよ。合格した年も本番直前1週間はほぼ眠れなかったし、試験中にパニックになって席を立って帰る寸前まで行きましたからね。しかも2回も(笑)。

でも「ここで逃げたら、お世話になった先生たちに顔向けできない!」と思って、どうにか踏みとどまりました。

夏目:
僕は1回目に不合格になった後、燃え尽きてしまいまして。コロナの影響もあってメンタル状態は最悪でした。今だから言えますけど、2回目の受験生活、途中から気分はほぼ撤退モードで。たぶん試験前日に友だちから連絡来なかったら会場にすら行かなかったです。


麦畑:
じゃあ、その友だちがいなかったら当日は……?

夏目:
家族に嘘ついて、会場に行ったフリをしていたでしょうね。会場に行って試験を受け切ること、試験日程の合間に友だちとご飯を食べることを目標にして、どうにか乗り切った感じです。


麦畑:
友だちに感謝ですね。ひまわりさんは?


ひまわり:
私は1日目の夜、「得意の行政法で失敗した」と思って号泣しました。友だちやともしび先生に電話で連絡をもらわなかったら立ち直れなかったかも。

すだち:
私の場合は、基本「欲を出さないように」ということだけ気をつけていました。あとは周囲の受験生の様子を見ながら落ち着いて受けられたと思います。

あ、でも試験の中日はローに行って、先生に愚痴をきいてもらってました。一方的にわーっと喋って、スッキリして帰るみたいな(笑)。おかげでなんとかメンタルは保てました。

ただ最終日の短答のときは熱があって、そのときだけは真面目に帰りたかったです。「ここで頑張れば論文を見てもらえるから、最後まで受け切ろう」と自分を奮い立たせて最後の刑法まで受け切りました。


夏目:
受け切るだけで相対的に浮き上がるから、絶対に最後まで受け切らないとダメですよね。


すだち:
ただ、一応受けきったとはいえ、正直自信はなかったです。短答が悪くて、絶対落ちたと思ったんですよ。だから発表当日は結果を見たくなさすぎて、発表時刻の午後4時までバイト入れてました


一同:
わかる。


麦畑:
僕も結果、見たくなかったです。お世話になっている先生にドナドナされて、仕方なく現地まで行きました。悲痛な心境でしたね……。番号があったことを知ったときには、ホッとしました。


すだち:
私も受かるとは思っていなかったので、ホッとしました。嬉しいというよりは、「やっと終わった」という感覚ですよね。自分が迷惑をかけてきた人たちにやっと「苦労をかけてすいません」と言えると思いました。


夏目:
僕も自分が受かるとは思っていなかったです。友人や恩師に合格を伝えているときが一番嬉しかったですね。


ひまわり:
私も受かった気がせず、ギリギリまで結果を見ることから逃げていまして。ともしび先生からのLINEで番号をあったことを知りました。先輩方のおっしゃるとおり、嬉しいというかホッとする感覚ですよね。いろいろな方に支えられてここにいる。周りの人に祝福されて、「受かったんだ」という実感がわきました


麦畑:
ありふれた表現かもしれないけれど、世界に色がついたような感覚ですよね。


夏目:
僕、合格後、やっと笑えるようになりました。


麦畑:
僕も受験中はずっと笑っていなかった気がします。あとはそうですね、「司法試験」というハードな試練に正面から逃げずに立ち向かったことで精神的にも強くなれたかな。

誰かにきちんと頼れる人間、助けを求められる人間が一番エライ!

麦畑:
ここまでみんなにはいろいろ不合格後の試行錯誤について話してもらったわけですけど、最後にこれから司法試験や予備試験合格を目指す受験生に向けて「合格に必要なこと」についてアドバイスをもらえるかな。

夏目:
まずは圧倒的な量をこなすことですよね。スランプが続くと方法論を変えたくなったり、勉強そのものをやめたりしたくなったりするかもしれないけど、受かるためには勉強量の確保は必要条件です。

そして、合格に必要なことから逃げないことも大事だと思います。たとえば、答案を書くとか。


麦畑:
そうですね、とにかく答案を書いて人に見てもらわないと始まらない。


ひまわり:
恥ずかしがらず、信頼できる人に答案を見てもらって自分のダメなところをきちんとさらけ出さないといけないですよね。


すだち:
それは本当にそうですよね。過去問に着手するのが遅いイコール不合格への道だと思います。

あと、素直に人のアドバイスを聞くことも大切。特に合格後は気持ちがささくれだっているかもしれないけど、合格者からのダメ出しは正面から受け止めるべきだと思います。

プライドがあるかもしれないけど、プライドが高くても試験に受からないのでは意味がないです。そもそも試験に落ちている時点で自分の方向性が間違っているんですよね。だからこそ変なプライドは捨てて、第三者から客観的な意見をもらって軌道修正しないと。


麦畑:
誰かを頼る、助けを求める力は大事ですよね。今はオンラインもありますし、リアルがダメでも人とつながる方法はあるから、一人で悩まずに遠慮なく頼ってほしい。


すだち:
むしろ頼ったほうがいいですよね。私自身は同期には頼れなかったけど、頼らないと損です。助けてほしいときには「助けてくれ」ってきちんと言ったほうがいいですよ。

基本、合格者は不合格者には優しいし、真摯に「受かりたい」と思っている人のことを親身に助けてくれる。


夏目:
そうですね。僕も先に受かった友人たちには本当に助けられました。


麦畑:
不合格になると友だちに連絡を取らなくなる人がいるけど、もったいないよね。相談相手が増えたと思ってプラスに発想を切り替えればいいと思う。


夏目:
そうですね。結局、素直に誰かに頼れる人間が一番エラいんですよ。頼る力も合格には必要だと思います。


麦畑:
そうそう、気後れから誰かに頼ることを遠慮しちゃう人もいるかもしれないけど、みんなから受けた恩は次に繋げばいい


すだち:
そもそも受かることが最大の恩返しだから。受かった時点で恩は返せていますよ!


一同:
それな…!!

複数回合格者座談会【完全版】はこちらから。


(文・構成:別宮央都、編集:OLS編集部)

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