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マスク着用せず反則負け 再び

以前、鼻出しマスクで反則負けとなった将棋の日浦市郎八段が、2月1日の棋王戦予選でマスクを着用したものの、鼻を覆わなかったため、臨時対局規定により反則負けとなりました。今回も立会人から2度にわたりマスクで覆うように要請したものの、「拒否します」と応じなかったとの事です。

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■日浦八段の言い分

日浦八段は「対局規定にはマスクの着用方法についての記述はない」とコメントしたそうですが、個人的にその言い分は分かります。確かにこの臨時対局規定はマスクを着用しろという規定であって、着用の仕方については記載がありません。連盟は正しくマスクの着用をしていないと言いますが、正しいマスクの着用方法は人によって違う、主観的なものとも言えますし、連盟が「一般的には鼻まで覆うもの」と言っても、それが国民の共通認識ぐらいの常識とまでは言えないのではないか、とも思ってしまいます。

特に昨今はコロナが収まりつつあり、緊急事態宣言や毎日千人、万人の感染者が発生していた頃と比べるとマスクの着用方法もルーズになっている人は多い印象があります。マスク着用を求めている公共交通機関や店舗においても、鼻マスク、あごマスクの人は老若男女問わず見かけますし、それを注意されている人は見かけた事がありません。

■連盟の言い分

一方の日本将棋連盟は「対局開始後に、日浦八段が鼻を出したマスクの着用を行っていたことから、立会人が臨時対局規定に従って、『正しいマスクの着用』を求め、この状態のままでは反則負けになる旨を通知しましたが、日浦八段が了承しませんでした。約20分後、対局規定第3章第9条第3項に基づき、再度立会人が『正しいマスクの着用』を行うように注意しましたが、日浦八段がこれに応じなかったため、立会人が臨時対局規定第3条及び第4条に基づき、日浦八段の反則負けを裁定しました」とコメントを発表しました。

先の佐藤天彦九段の不服申し立ての際に「臨時規定の趣旨は新型コロナウイルスの感染拡大防止の徹底という点にあり、その趣旨は社会通念上も過失事案に妥当するものと考えます。」と発表しておりますし、連盟が言っている事は至極真っ当な言い分であります。

ただですね、先の記事でも述べたように、だったら杓子定規に規定を適用しなさいよと思うわけです。佐藤九段の際は、注意や警告なしに一発アウトだったにも関わらず、日浦八段の場合は2度とも再三にわたる注意や勧告をした上での反則負けでした。これはおかしいでしょう。

佐藤九段が求めていたものはまさにそこで、「将棋本来のルールとは異なる社会情勢に基づくルールを一時的に付け加えているのだから、注意や勧告があって然るべきで、即反則負けになるのはおかしいだろ」という声を不服申立によって訴えたわけです。しかし、連盟は「二歩など将棋本来のルールと同様に即反則負けだ」と言ってそれを退けたわけです。であれば、日浦八段に注意や勧告をするのは「規則の恣意的な運用」であり、コンプライアンス的にも問題ではないでしょうか。

■連盟の方策

臨時対局規定を抜粋すると

「第一条 対局者は、対局中は、一時的な場合を除き、マスク(原則として不織布)を着用しなければならない。但し、健康上やむを得ない理由があり、かつ、予め届け出て、常務会の承認を得た場合は、この限りではない。」

とあります。単純に考えると、この「(原則として不織布)」なんて文言を入れるより「マスクを正しく着用しなければならない。」とした方がこうした事態を防げたのではないでしょうか。

また、臨時対局規定の第3条には

「対局者が第1条の規定に反したときは、対局規定第3章第8条冒頭各号の違反行為に準じる反則負けとする。但し、この反則負けには、同条第1項及び第3項は適用しない。」

とあります。これによりマスクを着用しなければ即反則負けとなるわけですが、第3条の但し書きである「この反則負けには、同条第1項及び第3項は適用しない。」の意味が個人的に良く分かりません。この同条とは対局規定第3章第8条を指すと思いますが、連盟HPの対局規定(抄録)にある第8条第1項は「対局中に反則を犯した対局者は即負けとなる。」とあり、第3項はそもそも記載されていません。

私の勘違い、勉強不足があるかもしれませんが、これを見るとマスクを着用しなかった場合は反則負けとなるものの、臨時対局規定第3条に但し書きにより第8条第1項の「対局中に反則を犯した対局者は即負けとなる。」は適用されない、つまり即反則負けにならない、と読めてしまいます。

ルールに係る条文を持ち出して話をするなら、こうした点も広く公開し、誰が見ても分かるような規定を作るべきでしょう。

いずれにせよ、将棋連盟は疑問を持たれるような部分については丁寧に説明を行い、不備があれば迅速に対応し、社会情勢の変化を遅滞なく把握して規定の整備を行って欲しいですね。


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