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人生の片手間に〜エッセイガッサイ㉙ 『放課後の校舎』 #走らない

「走らない」

 小学生の頃に先生から幾度となくいわれた言葉です。廊下や教室はもちろん登校時間や下校の時間、3歩目からは走っていたような気がします。
今振り返ると、何故あんなにも走っていたのだろう。
私が通っていた小学校は、東側の下駄箱から西側の下駄箱にかけて、吹き抜けるように真っ直ぐ廊下がありました。そこにドスンと教室や職員室などが連なっています。
廊下の距離は200メートル程度。実際はそんな距離無かったかもしれません。しかし当時の私は、1年生と6年生が居据わる空間が全く別の世界のようで、廊下はどこまでも続いているようでした。
 ある日のクラブ活動終わりに、忘れ物を取りに教室に戻りました。誰もいないシンと静まり返った校舎の中。その中に入り込み、廊下を東側から西側にかけて全力で駆け抜けました。
例えるなら、車が1台も走っていない高速道路のセンターラインを股に掛け、アクセル全開でかっ飛ばすような感覚でしょうか?ついでにオービスにむかってピースもしましょう。

その時です。

「廊下は走らんよ」

何処からか現れた先生は、放課後の顔をした、だだの大人でした。

#シロクマ文芸部 #走らない #エッセイ

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