週刊文春記事補足 歯列矯正藤井聡太に棋士が「抜くな、削るな、被せるな」
週刊文春6月13日号の記事にコメントを寄せさせていただきました。
紙面に入りきれなかった詳しい内容をお伝えします。
今年になってからメディアで藤井さんが歯列の矯正治療を始めた事が報じられています。
藤井さんの矯正はこれが二回目。
十代前半の時に非抜歯の矯正を行って行っており、今回は上あごの第一小臼歯を二本抜歯しているようです。
十四歳でプロ入りした直後の写真を見ると、左側の犬歯が少し飛び出しているものの、顔はほぼ左右対称で大きな問題はないように見えます。
しかしその後の藤井さんは左の顔が歪んでいます。
左の鼻唇溝が深くなり、左の口が上がっています。
歯列も左の歪みが顕著になりました。
つまり一度目の矯正で良くなったものの、再度矯正が必要なほど歯列が歪んでしまったのでしょう。
左ばかり悪くなっている原因は左の頬杖が考えられます。
自宅のパソコンで将棋AIを使った研究に没頭する姿がNHK特集で映されていました。
毎日長時間パソコンで研究する際、主に左頬杖をされるので、その力で左の歯列が内側に傾き、左の前歯が押し出されたのでは?
今回、再治療に当たって頬杖を止めることができなければ、治療もうまく治らないし、また数年で元の悪い状態に戻ってしまうでしょう。
矯正治療は何度も行うものではありません。数年かかる治療には痛みや不快感が伴い、歯根吸収のリスクもあります。
保険外で高額の費用を支払い、苦労して治療した結果が数年でダメになるのはとても気の毒です。
顔が歪み歯並びが悪くなるのは大半、中下顔面に加わる良くない生活習慣です。
(このような生活習慣のことを「態癖」といいます。)
私自身も約五年間矯正治療を行った事がありますが、上手く治らず治療後は長年咬合違和感に悩まされました。私は机に突っ伏して寝るクセがありました。
よくない生活習慣で歯並びに重大な影響が生じる事を是非知って頂きたいです。
補足:他の棋士も頬杖しているのに、どうして藤井さんだけ歯並びが悪くなるのか?
という疑問に対しては、
頬杖の当たる時間、強さ、場所の違いによると考えられます。
同じ頬杖でも、頬骨や顎骨などの骨が硬い部分に当たると変形しにくいです。
一方で藤井さんが長時間行っている頬杖は、変形しやすい部分に当たっていると思われます。
歯の植わっている歯槽骨の表面は硬い緻密骨ですが、内面はスポンジのようにスカスカの海綿骨です。とても変形しやすいのです。
ここに力がかからないように気を付けることが大事です。
参考文献:「顔・からだ バランスケア」―お口の健康を保つために
筒井照子先生 医歯薬出版株式会社
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