見出し画像

「勉強が楽しくない」のはなぜ?

前回まで、ゲームの楽しさを見てきました。そして、もしかすると今の勉強のやりかたは楽しさを感じられないような活動にしてしまっているかもしれないことがわかりました。今回はまず勉強が楽しくない活動になってしまう原因について考えてみたいと思います。

点数目的だと息詰まる

勉強ができる、できないという話をするとき、点数を取れるかどうかの話になることは多いですよね。

ドラえもんののび太はいつもママから0点であることを叱責されています。学校は、学習指導要領にならって子供を評価しなければなりません。学校では子供がその教科、その単元でどのくらい学習の目標を達成できているかを測るためにテストを行うことが多く、能力を数値化して評価するということをいつもしています。そのため、勉強ができるかどうかは点数でわかる。点数が高いと勉強ができる人、ということを暗黙の了解のようにみんなが認めています。

勉強の結果を数値化することで、高い点数をとることや、友達とくらべて高い点数をとることが楽しみになる気持ちはとてもよくわかります。しかし高い点数を取る楽しみを勉強の主な目的としてた場合は、点数をとるテクニックを身に着けるのが楽しさの早道ということになります。例えば小学校の社会科であれば一般的にはより多く暗記をすればテストで点数を取れるでしょう。しかしそれはテストで点数をとるための「記憶」の技術であり、記憶は学びの中においてはひとつの要素でしかありません。記憶と学びの関係についてはまた別で語ることにします。

さて話を戻して、高い点数をとることが勉強の主な楽しさと感じていた場合、高い点数をとれなかったり、友達と比べて点数が低かったりしたら勉強に対しての意欲を失うこともありえます。何度やっても勝てないゲーム、たとえば将棋やチェスは運の要素はまったくなく実力によって勝負が決まります。実力の差が歴然で毎回負ける将棋をさせられても楽しくはないでしょう。

ご褒美とアンダーマイニング効果

では、勉強に関してほかにどのような楽しみがありえるでしょうか。

何事もご褒美があると人は嬉しくなります。勉強をしたらおもちゃがもらえる、お金がもらえる、もしくは自由時間をもらえるなど、勉強をしたことで何かご褒美があると頑張って勉強に取り組むかもしれません。「ご褒美」という表現は少し幼い感じがするので、ここではご褒美の事を「報酬」と呼ぶようにしましょう。

さて、人は報酬があれば楽しく活動できます。これは脳内で分泌されるドーパミンが深くかかわっています。報酬があればうれしい、この時にドーパミンがでます。しかしこのドーパミンというのは同じ刺激を繰り返すと分泌される量が減ってくるのです。

例えば勉強をすると報酬として100円もらえるとします。そして次も100円その次も100円と報酬をもらえたとしても、その報酬は徐々に魅力を感じなくなってきます。

もしこの時に報酬の100円をやめたらどうなるでしょう。最初は報酬目的で勉強をしていたけど、勉強しているうちに報酬がなくても楽しくやれるような勉強の面白さを見つけていた場合は、報酬をやめても勉強を続けるかもしれません。

しかし一方で、報酬がなければ勉強しない、という方向に向く可能性もあります。一番望ましくないケースはもともと勉強そのものの楽しさ、内的な報酬を感じて勉強していたのに、あるとき勉強をすることでお金やおもちゃなどの外的な報酬が出るようになったことで、外的な報酬が目的に変わってしまい、外的報酬がもらえなくなったら勉強をやる気がなくなってしまうというケースです。これをアンダーマイニング効果と呼びます。心理学的な言い方では、内的な動機付けで行っていた行為に対して、外的な動機付けを行うことでモチベーションが低下する現象です。過正当化効果、抑制効果とも言います。

何かの行動をさせたい時にお金や物などの外的な報酬を用意するのは効果が高いです。しかしその効果を持続するには報酬の魅力を上げ続けなければなりません。金銭的にも難しいでしょう。理想的なのはお金やおもちゃなどの外的な報酬ではなく、勉強そのものに楽しさを感じて、内的な報酬でやり続けてもらうことです。そのためには、最初は外的報酬を用意したとしても、どこかで本人がその活動に内的な報酬をみつけ、その内的な報酬をやる気のもとにしてもらえるのが理想的です。最初に外的報酬を与えたことで勉強にとりくむようになったからと言って、さらに外的報酬を与え続けるとアンダーマイニング効果が起こる可能性があります。

さて、今回の話の中で内的報酬、外的報酬という言葉を使いました。なんとなくイメージ的にはわかるかもしれませんが、次回、この内的報酬、外的報酬について説明したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?