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Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性の問題への対処

写真は3月はじめに撮った少し早咲きのサクラです。

白血病やリンパ腫の方が受けられる治療が、性に対してどのような影響を与える可能性があるのかをまとめています。こちらを合わせてご覧ください。

Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性への影響①
Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性への影響②~造血幹細胞移植による影響~

今回は性への影響を予防する方法やどのように対処していくのかについてお伝えしたいと思います。

●治療の際にできること
性へ影響をもたらす要因として最も大きいのは、「卵巣機能が低下して女性ホルモンの分泌が抑えられること」です。

そのため治療のときに卵巣の機能を守ることが必要となりますが、全身放射線治療を受ける場合に卵巣の機能を守って妊孕性(赤ちゃんを産む力)を温存する目的で行われる方法をご紹介したいと思います。

ちなみに妊孕性を温存する方法としては受精卵や卵子、卵巣凍結というのがあります。これらの方法に関しては「日本がん・生殖医療学会ウェブサイト」に詳しく記載されていますので、ご覧ください。

・(造血幹細胞移植で全身放射線療法を受けられる場合)卵巣部分を防御シールドで遮断する方法
※以下の情報は「小児、思春期、若年がん患者の忍容性温存に関する診療ガイドライン」より記載しています。

この方法は全身放射線照射に際に卵巣部分を防御シールド(金属片)で遮断して、卵巣部分へのダメージを軽減する方法です。卵巣遮断をおこなった16人の患者のうち卵巣機能の回復率が移植後2年で68.8%であったと報告されています。

抗がん剤を使用した場合でも、年齢や薬剤の量を考慮したうえで卵巣機能の回復が見込める場合に用いられることがあります。

卵巣に当たる放射線の量は少なくなるので、移植後の再発のリスクが高まることも言われており、非寛解期での施行は推奨されないとされています。

まだ報告が少数例にとどまっているためガイドラインでも積極的な記載はしておらず、実施している施設も限られています。
(私が調べた限りで、過去に臨床試験を行っていた病院等の情報です。少数で申し訳ありません)
東京大学医学部附属病院
がん相談支援センター:03-5800-9061)
自治医科大学さいたま医療センター
がん相談支援センター:048-648-5184)
まずは、自分がこの治療方法の適応となるのかに関して担当の医師に相談してみましょう。

こちらにも情報が載っていました。
日本造血幹細胞移植学会>妊孕性の温存

●治療後の対応について
治療が終わってしばらく、「性」や「性生活」について関心が湧かなかったり、あえて考えないようにしていたりなど、さまざまな状況があるかもしれません。ようやく性に気持ちが向いたとき、治療によるからだの変化に気づくということもあります。
(体験談:【サバイバー体験談】(小児がん)〈性+生活〉と考えたときに気づいたこと

・性の健康を守るために検討できること
① ホルモン補充療法
強い抗がん剤を受け卵巣の機能が低下している場合、女性ホルモンを補充する「ホルモン補充療法」は、年齢などに応じて適切な時期に検討されることが勧められます。

これは女性ホルモンが不足することで思春期の開始時期や進行の異常(小児がんの場合)、月経停止、皮膚弾性の低下、骨密度低下、泌尿器症状(頻尿や尿失禁など)などの影響が起こるからです。

担当の先生に相談することもできますし、女性ホルモンのスペシャリティを持つ婦人科の医師に相談することが可能です。

造血幹細胞移植後のホルモン補充療法についてはこちらにも情報がのっています。
日本造血幹細胞移植学会>ホルモン補充療法

② (放射線治療を受け、その後すぐにセックスをする機会がない場合に)腟ダイレーターの予防的な使用
造血幹細胞移植の全身放射線治療によって放射線が腟にあたり炎症が起きる影響で、腟が狭くなることがあります。これによって挿入が難しくなることもあります。

腟の狭窄を予防するためには治療が終わって医師に再開してもよいことを言われたら、なるべく早めにセックスを再開することが大切です。

しかしそのようにすぐ再開できることは少ないかもしれません。その際に腟にダイレーターという大きめの硬いタンポンのようなものを1日数分いれて、狭くなることを防ぐ方法があります。
腟ダイレーターに関する研究論文(http://www14.plala.or.jp/jsss/paper.html

日本では腟ダイレーターに関する理解がまだ進んでおらず、あまり積極的でない場合が多いのが現状です。

しかし腟ダイレーターは癒着が進行していた際にも適応になることがあります。
腟癒着に取り組んでいる医師は造血幹細胞移植に伴う腟癒着は骨盤にあてる放射線治療の腟癒着(婦人科系のがんや直腸がん、膀胱がんなど)よりもより軽度で。状況を改善できる余地があるということも言っていました。

ぜひ理解のある医師(婦人科医師がよいです)を見つけて、相談してみるべきです。

また膣ダイレーターと同様の役割を果たすセルフプレジャーアイテムを活用することもできます。例えばテンガヘルスケアの商品の中にイギリスでは医療用として使われているirohaというグッズがあります。
こういった商品を使いながら自分で楽しみ癒着を防ぐ方法も、もちろんあります。(痛みが強い場合は無理に行わず、まず医療者に相談するようにしてくださいね)

③潤滑剤を使用する
※ASCO(アメリカがん臨床学会)の「Interventions to Address Sexual Problems in People With Cancer: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline Adaptation of Cancer Care Ontario Guideline」「Preserving Sexuality and Restoring Sexual Function in Male and Female Cancer Survivors」とより情報をお伝えしています。

腟の乾燥があり、痛みを伴う場合はヒアルロン酸を含むpHバランスがとれた潤滑剤を使うことが考慮されます。
例えば、株式会社ハナミスイから発売されているインクリアケアジェリーなどが有名です。

またセックスする際に限らず、日常的(内診時なども含む)に掻痒感や痛みなどの症状が強い場合は、潤滑剤を腟や腟の入り口、外陰部のひだの部分に週に3~5回塗布することで症状の改善を目指すことができます。

もしそれでも症状が改善しない場合は局所の低用量エストロゲン療法(腟剤)が考慮されます。全身へのホルモンの影響が低いため、全身ホルモン補充療法が適応にならない場合などでも使用できます。

担当の先生に相談することもできますし、女性ホルモンのスペシャリティを持つ婦人科の医師に相談することが可能です。今までの治療経緯を伝えるようにしましょう。

●挿入を伴う性生活があったときにできる工夫
・「体位の工夫」と「腟の筋肉のリラックス」
痛みがあったり挿入が難しい場合に、自分自身の工夫としてできるのが「体位の工夫」と「腟の筋肉とリラックス」です。

まず自分で挿入の深さを変更できる体位がよい場合があります。
たとえば騎乗位をとって、力を抜きながら自分のペースで挿入していきます。体を起こしていても、前かがみでも構いません。無理せずゆっくりと行うことが大切です。

さらに腟内の筋肉を引き上げるように力を入れた後にふぅっと息を吐きながらゆるめ、力が抜けたときにそのリズムに合わせて挿入をしてもらう方法も効果があります。

足の位置を変えたり(曲げたり伸ばしたり)、太ももの筋肉に力をいれることでも骨盤内の角度が変わり痛みが少ない位置を探せるかもしれません。

血液内科の担当医の先生はもしかすると性機能障害について、あまり知識を持っていないかもしれません。
しかしもし性や性生活について悩んだときに、全くなにもできることはないわけではないことを覚えていてください。

婦人科の先生、性機能障害に理解ある先生、治療による影響について理解してくれる医療従事者に相談することで大きな一歩を踏めるかもしれないことを、ぜひ覚えていてください。

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