お花

Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性への影響①

この記事は白血病やリンパ腫などの血液がんで抗がん剤治療や放射線治療を受けられる、受けられた方に読んでいただきたい内容です。

性生活への影響は婦人科がんや乳がんの方の話題として取り上げられがちですが、血液がんの場合も卵巣機能へのダメージが大きい抗がん剤が選択されることがあるため、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

治療が終了したあとの生活を歩むなかで、知らなかったからうまく対処できなかった、ということがなるべく少なくなるといいなと思います。特に性生活に関することは、一度の失敗がその先を大きく左右することがあるからです。

「セックスについて」は患者さんが医療者に対して、悩みはあったけれども相談できなかったというアンメットニーズ(隠されたニーズ)として高い割合を占めています。

ひとつはそういうからだの変化があったことにサバイバー自身時間がたってから気づき、いったい誰に相談したらいかわからず隠されたニーズのまま終わってしまっていたこと、さらに医療者側がそのような悩みがあったことを知らなかったことが挙げられます。

しかし厚労省ががんサバイバーシップに積極的に取り組むよう指針を出しました。どんどんと変わっていく時期なんだと思います。
※がんサバイバーシップとは「がんを経験した方が生活していくうえで直面する課題を家族や医療関係者、他の経験者とともに乗り越えていくこと」です。(https://survivorship.jp/より)

さて次の表はアメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)が出しているもので、白血病やリンパ腫で使われる抗がん剤の薬の中で、卵巣への副作用を示しているお薬の一覧です。

(ASCOガイドライン, 2013)
この中で気をつけなくてはいけないのは一番の上の項目、70%以上の確率で生理がこなくなる可能性がある「High risk」のお薬を使っている化学療法や放射線治療です。

一過性の場合もありますが、多くの場合卵巣機能が低下して元に戻らなくなってしまう「卵巣機能不全」が起きることがあるからです。

もし自分の治療が上記にあてはまるか分からない場合は、先生に積極的に聞いてみましょう。

卵巣機能不全が起きると、治療が終わっても生理がこなかったり、きても不順であったり、排卵が起こらなくなったりします。更年期症状のようにホットフラッシュが起きたりすることもあります。血液検査で女性ホルモンなどの値をみて、判断することができます。

上記の治療をしたあと卵巣の機能に影響があるとご自身で気づくきっかけはやはり、生理と更年期症状です

治療中生理がこない期間があった方は、治療が終わっても卵巣機能が戻らない可能性があります。治療後生理はきたか、周期通りかということをぜひチェックしてください。また急にほてったり発汗したりするなどのホットフラッシュの症状も注意してください。

もしなかなか生理がこないな、生理がきているけど不順だな、なんだか急にほてったり汗をかいたりすることがあるな、と感じたら卵巣機能に影響がある可能性が高いです。

年齢にもよりますが卵巣機能の低下をそのままにしておくと、二次的な影響があります。詳しくは下の記事をご覧ください。そのため積極的に主治医の先生に相談してみましょう。
Q.エストロゲンの作用でみなさんに伝えたい大切なこと

婦人科にいって治療の経緯を説明してみるのもいいでしょう。血液検査をし状況をみながら、年齢に応じて必要な対処をしてくれるはずです。(必要な対処に関しては次の記事でご説明します)

卵巣機能に影響があると、自然に妊娠できないからだになってしまう可能性があります。先生は治療のまえに妊孕性温存といって卵巣や受精卵を凍結することをすすめる場合があります。
(妊孕性温存については日本がん・生殖医療学会の研究班HPに情報があります。またがん診療連携拠点病院にあるがん相談支援センターでは無料で相談ができます。)

卵巣の機能がなくなったり、下がったりすることで女性ホルモンの分泌が低下します。それによって性生活では下記のような影響が生じる可能性があります。

・膣が伸びにくくなる、濡れにくくなることがある
女性ホルモンのなかで、性生活に影響を与えるのはエストロゲンです。エストロゲンは膣の上皮細胞に作用して、分裂や増殖を促しています。細胞運動が活発化していることで、膣の粘膜は厚く保たれます。

このような細胞の状態が保たれていると、性的に興奮したときに、細胞が充血し上皮細胞から潤滑液を放出します。これが濡れた状態、ということです。また単にしぼんだ空間であった膣がよりその長さを増し、幅が広がります。このような膣の状態になることで、挿入する準備をするのです。

エストロゲンの分泌が少なくなると上皮細胞が薄くなりかたくなってきます。そのため伸びにくくなってしまいます。興奮しても膣の細胞がうまく働かず濡れないなと感じたり、痛みを感じたりすることがあるのです。

・性欲が低下することがある
エストロゲンは排卵期に向かって徐々に上昇し、性欲を高めるという本能的な作用を持ちます。(赤ちゃんを作ろうとするのです)そのため性欲がさがってしまうこともあるかもしれません。

(しかしもう一つ性欲をつかさどるのがテストステロンという男性ホルモンです。テストステロンは卵巣と副腎と呼ばれる臓器から作られており、卵巣機能がさがっても副腎が働き続けてくれるため劇的に下がることはありません。

さらに性欲は人を大事にしたいとか触れられたいなどの気持ちから大脳を通して生まれるものがあります。性ホルモンを介さず、感情や外界からの刺激が直接脳に刺激を与え、性欲をもたらすのです。

そのため治療が終わって体調が戻ってきてもさまざまな理由で性生活のことを考えられないなど、性欲の低下はやはり精神面が大きく影響します。)

もし性生活がうまくいかなくても、そこには対処できる原因があります。私はセックスできない体になってしまったのだ、ということではないことを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

次の記事では対処方法についてお伝えしていきます。


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