『平津の坂』(桜井健司氏)を読む。
桜井健司氏の第四歌集である。
作者は証券マンで、音短歌会に所属。
日本詩歌句協会の歌会
(短歌ワークショップ)
で毎回お会いする。
その短歌には長年仕事や短歌に向き合って来た者の凄みがある。
五首選で紹介。
爽やかな一首。
「初夏の両輪」という魅力的なフレーズも
「きらきら」している。
※小さきにルビあり。ちさきと読む。
街でビニール袋が風に煽られて漂っている光景を見かける。
「何処に行きしや」が切実かつ含みがある。
マイクロプラスチックなどの環境問題の短歌とも読めるが、
根底に「どこへ行くか分からないビニール袋」への同情がある気がした。
作者は仕事柄、日々「費用対効果」に追われて過ごしていることだろう。
そういった事情を加味すると、さらにこの短歌は味わい深い。
もちろん加味しなくても一首として成立している。
場所の対比が面白いと思った。
ニュースの中の目の前にない
「月面の土地」と
今まさに目の前にある、現実としての
「夕刊の折れ目のあたり」
の対比。
土地という場所と折れ目の箇所、
ニュースと目の前の現実、
夜を思わせる月と夕刊など
たくさんの取り合わせを感じる。
しれっとした日常の発見の一首と見せかけて、なかなか技巧的だと思う。
魚の目が怖くて魚類の料理は食べられない、苦手という方もいる。
何気ない料理の焼きアジだが、そこに
「睨まれ」るような凄みを感じている。
水揚げされて焼かれたアジに感情移入していそうだ。
まとめ
時代に即した内容を詠んでおり、職業柄時流の観察眼があるように思えた。
歌人としてのキャリアの長さを感じさせるしっかりした作風の短歌群だった。
日本詩歌句協会のホームページ
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