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『いつも恋して』(水門房子氏)を読む。

分かち書きの短歌が特徴的な
水門房子氏の第一歌集
『いつも恋して』。

内容は甘酸っぱくユーモラスで
読んでいて飽きない。

そのうち五首紹介。

※本文が縦書き・分かち書きなので
横書きになってしまうが
分かち書きで引用して紹介したい。


約束は何もないのに
なんとなく
パーティー用のドレス見ている
29ページ

未来に良いことがありそうだと無意識に思っているのではないか。

「なんとなく」の動作から、作者の性格が伝わってくる。

「すき・きらい」
もうどっちでもいいような
気になっている花びらむしり
131ページ

「花びらむしり」という言い回しが上手い。
「もうどっちでもいい」という投げやりな言い方と合っている。

どっちでもよくなっても
おそらく「花びらむしり」を続けているのだろうと思うと、切ない。

きっとAIには詠めないような心の綾の短歌だと思う。

人並にいきたくはない
人波にのれば駅には
着けるんだけど
143ページ

「人並」と「人波」の同音異義語や、
「いきたく」が「行きたく」「生きたく」の両方に読める、掛け言葉の用法など、
簡単な歌と見せかけて技が色々使われている。

その上、作者の決意も良い。
言い切りがカッコいい。

久しぶりに会えるかもって
それだけで
海は真っ青 富士もくっきり
195ページ

自分の気分が良いと風景がさらに輝いて見える。
そんな多幸感と風景が美しい。

自然からも祝福されているようにさえ読める。

夏色の水平線に涼しげに
ぼんやり浮かぶ
ブルーシルエット
213ページ

「夏色」や「ブルーシルエット」などの青色系の言い回しが際立つ一首。

「夏色の水平線」で、夏の海だと分かるというさりげない技巧もある。


まとめ

短歌の内容のキュートさもさることながら
分かち書きを使いこなしていると感じた。
歌の雰囲気とマッチした、分かち書きの空白感。
改行やスペースがあることで軽やかな印象だと思った。

「カワイイ」だけでは終わらない深さと面白さがある。

分かち書きの短歌を画面に入力すると
どうしても作者がこだわったであろう
スペースや改行などの見た目のイメージが違うようになってしまう。

写真に撮ってアップしようかと思ったがやっぱりイメージが違ってきてしまう。

ぜひ実物の紙の本に収録された
「こだわりの配置」を
ご覧頂きたいです。


いつも恋して https://amzn.asia/d/01nS8ob

最後までお読みいただきありがとうございました。 もっと面白い記事を書けるように日々頑張ります。 次回もお楽しみに!