お笑い初期衝動
21.滑稽な僕、面接官の笑顔
オーディションの結果は後日と聞かされた。が、後日もくそもない。
面接官を怒らせてしまった時点で、僕の不合格は誰の目にも確定である。
「じゃあこの5人はこれで終了です」
芸人志望5人と面接官とのやり取りが終わり、次の5人と入れ替わるタイミングとなった。
芸人志望の者達がすみやかに部屋を出ていこうとする。その時。
僕1人だけが、おもむろに面接官の方に近付いていき、こう言った。
「すいません、この養成所のオーディションは定期的にあるものなんですか?」
今回はダメだったけど、もう1回チャレンジしよう。僕は既に、次回オーディションへ目を向けていたのだ。
次のオーディションがあるなら、是非日時をチェックしておきたい。
当時はまだネットが普及してない時代。欲しい情報は、きけるときににきいておかないといけない。
すると、面接官の1人がこう言った。
「3ヶ月に1回やってるから。読売新聞にたまに募集載せてるよ。」
「あ、そうなんですね。チェックしておきます。」と僕が言うと。
つい先程、顔を紅潮させて怒っていた面接官が、口を開いた。
「いや君、まだ落ちたって決まったわけじゃないよ(笑)」
先程は鬼の形相であったが、一転して少し笑顔が見えた。
「君、変わってるなぁ(笑)」
そんなふうに言われ、ちょっとだけ場がなごんだ。
不合格を言い渡す前に不合格前提の質問をしてる僕が、少し滑稽に見えたようだ。
しかし常識的に考えて、やはり不合格であることは間違いない。
「今回はダメだったんで、また次回頑張ります。」
僕はそう言って、部屋を後にした。
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