お笑い初期衝動
42.マイナスとマイナス
僕の台本、といっても相方・川田が台本にないボケを連発するスタイルの漫才を、養成所のネタ見せで披露した。
が、どうもいい手応えを感じない。
そりゃそうだわな…。
僕は内心、当然の結果だと思った。
川田は台本にないアドリブのボケを次から次へと繰り出すのだが。
正直なところ、そのアドリブのボケは、僕から見て、どれも面白くないボケだったのだ。
“ボケを次から次へと繰り出す”なんて書くと、いかにも面白いかのように想像させてしまったかもしれないが。
ズバリ言うと、誰でも思いつきそうな安易なボケをただ連発してるだけの漫才だったのだ。
台本にない、アドリブの面白くないボケを連発。しかもウケない。
こうなると。
台本を書いてる僕からすると、「もうアドリブのボケやめてくれないか」と思ってしまう。
極端な言い方をすると。一生懸命考えた台本を、相方の面白くないアドリブで台無しにされてる気すらしたのだ。
まあ、僕が書いた台本通りやればウケたのかというと、そうでもなかったとは思うが。
川田は「せっかく芸人になったんだから、思う存分ボケてみたい」と思っていて。
僕は「せっかく芸人になったんだから、自分の台本で笑わせたい」と思っていて。
互いに思いだけがはやり、互いに自分の力量を理解できていない。
マイナスとマイナスの掛け算は、プラスに転じることもなく。
ただ、ストレスだけが積み重なっていった。
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