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お笑い初期衝動

39.ロッキンチェアー石本のこと

前回突如名前が出てきた同期の芸人、ロッキンチェアー石本の話をしよう。

ロッキンチェアーという漫才コンビのボケ担当の方、が石本です。

ロッキンチェアーは、当時の松竹芸人としては珍しく、すごく早いテンポの漫才をやるコンビで。
今でいう、ウーマンラッシュアワーぐらいのテンポだった。

石本は、「こういう漫才をやりたい」というこだわりを強くもってそうなタイプで。
顔面は決して男前ではないのだが、でもどことなく華があり。ガッツのある男に見えた。

そんな石本からの言葉は、時にハッとさせられるものがあった。

前回の話でも、「石本との会話で自分達のネタがおもしろくなかったんだと気づいた」なんてくだりがあったが。
他にもいくつか、石本からの印象深い言葉があった。


僕が養成所でマジシャンのネタをやって大スベリした後。(←27.脳内バグ 参照)
同期のみんなに「何やってんのかようわからんかった」と言われる中、石本だけはこう言った。

「よかったわ。ネタ作りのヒントになったわ。」

そして後日、養成所で彼らの漫才を見たとき。
もしかして、これがそのヒントになって作ったネタかも!?と感じるネタをやっていた。

確か寿司職人のネタで、ズボンのポケットから寿司が出てくるとか、なんかそういうボケだったかな。
とにかく、若干マジシャンっぽい要素のあるネタだった。
(僕からのインスピレーションじゃないかもしれないけど)


あと養成所で、ドルバッキーとして、僕がツッコミで漫才をやっていたとき。
ネタ終わりで、石本が僕に近づき、こそっとこう言った。

「絶対ボケやった方が向いてるよ。」

まだ自分が、ボケが向いてるのか、ツッコミが向いてるのか、よくわかってなかった頃で。
石本が確信をもって僕にそう言ってくれたことは、当時すごく参考になった。
また、「ボケをやらないともったいないぞ」というニュアンスも感じたので、石本は僕を素材としては評価してくれてるんだなぁと、励みにもなった。


あと、もう一つ。
松竹の養成所に入って数ヶ月経った頃。
芸人何人かでダラダラと雑談をしていたとき、不意に、石本が僕にこう言った。

「俺と組まへんか?そのときは、俺がツッコミやるわ。」

ロッキンチェアーではボケを担当してた石本が、もし僕と組むなら、ボケの座を譲って、自分はツッコミにまわる。と言うのだ。

やはり石本は、僕をボケとしては一定の評価をしてくれていたのだ。
お笑い熱の強い男に評価されるというのは、なんとも嬉しいものだ。

石本とはコンビ結成とはならなかった。
また、ロッキンチェアーは1年足らずで養成所に姿を見せなくなり。
それ以来、彼と全く連絡をとる機会はない。

今頃は、もう芸人やめてるのだろうか。
それとも僕のように、売れる見込みもないまま、今も続けてたりするのだろうか。

お笑いを始めたばかりのあの頃。
全てが初めてのことで、全てに気持ちを揺さぶられた。
そして、今となっては全てが懐かしい。

石本。

元気にしてるかな。



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