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お笑い初期衝動

43.同義語を探る作業

相方・川田のアドリブのボケ数は凄まじく。
しかし、そのつまらなさも凄まじかった。

ネタ合わせの段階でアドリブのボケを半分ぐらいに減らしてもらった上での、養成所での披露だったのだが。
それでも残り半分のアドリブボケが、(ある意味)破壊力抜群のつまらなさで。

これでは、どうにもこうにも面白い漫才ができそうにない…。と、僕は頭をかかえた。

そんなにつまらないボケなら、半分と言わず、全部やめてもらったらいいのに。

読者はそう思うかもしれない。確かに正論である。
しかし、コンビというのは大変にデリケートなもので。
相方にストレートに「それ、面白くないよ」とは、案外言えないものなのだ。

「面白くない」と言われたら、傷つくのをよくわかってるし。相方がヘソを曲げてしまったら、ネタ合わせもやりづらくなる。

だから極力「面白くない」とは言わずに、なんだかよくわからない別の表現を探らねばならないのだ。

「ごちゃごちゃするから、ボケ減らそうか」

「詰め込みすぎると、聞いてる側がおいてけぼりになるかもしれんから」

「より自信のあるボケに絞った方が、聞きやすいと思うよ」

僕はこんなふうに言って、アドリブのボケをなんとか半分に減らしてもらった。
できるだけ相方を傷つけず、「面白くない」と同義の表現をするのは、かなり神経をすり減らす作業だった。

まあそれにしても。
相方・川田に「より自信のあるボケに絞った方が、聞きやすいと思うよ。どのボケが自信ある?」とたずねたところ。

川田が「全部」と答えたときは、思わず白目をむいてぶっ倒れそうになったものだ。



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