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プロダクトをバケツとして考える
Product Manager (PdM) はプロダクトを成長させることが使命です。成長をどう定義するかはプロダクトによって異なりますが、この記事ではDaily Active User (DAU) について考えます。
プロダクトの成長においてよく使われるメタファーはバケツではないでしょうか。深津さんの以下の記事が詳しいです。
DAUの構成をざっくり以下で定義します。本来であれば、さらに複雑な数式になります (復帰ユーザーなども入ってくるなど) 。その説明はGunosyさんの記事が詳しいです。合わせてご覧ください。
DAU = 既存ユーザー + 新規獲得ユーザー − 離脱ユーザー
このDAUの構成をバケツというメタファーを用いると次のように表せます。
・DAU = バケツに入っている水の総量
・既存ユーザー = バケツに元々入っていた水の量
・新規獲得ユーザー = バケツに注がれる水の量
・離脱ユーザー = バケツの穴から出てしまった水の量
イメージだとこんな感じです。パワポで適当に作った画像ですみません、、
バケツの穴はユーザーがプロダクトを使わなくなる原因です。その原因はプロダクトにより様々あります。ユーザーがプロダクトを使い続けていくうちにこの穴によってユーザーはプロダクトを使うことを止めてしまいます。明確な欠点としての穴ではなくても、定着させることができずに知らず知らずのうちに使わなくなってしまうということもあります。
ユーザーがプロダクトを使い続ける率を継続率 (Retention Rate : RR) といいます。Day1RRはユーザーがプロダクトを使い始めた次の日にまたプロダクトを使ったユーザーの率を示しています。
Day1RR = 70% = 新規ユーザー100人中70人が次の日も使う
ほとんどのプロダクトはこのDayNRRのN (経過日数) が大きくになるについれて使ってくれるユーザーは減っていきます。このあたりはGunosyさんの記事が詳しいので気になった方は読んでみてください。
DAUの天井
新規ユーザーを安定して獲得できたとしても、いずれDAUには天井が来ます。Gunosyさんの記事の画像を引用させていただきます。
このように、DAUはグラフ上で寝てくるのです。この本質は以下です。
新規ユーザー数 ≒ 離脱ユーザー数
これは、新しく獲得したユーザーがそのまま離脱に繋がるのではなく、今まで獲得していたユーザーもたとえ30日使い続けてくれていたとしても、いずれはプロダクトを使わなくなってしまいます。それらが積み重なったのが、離脱ユーザー数となるわけです。
新規ユーザーも広告での獲得に依存してしまっていると、当たり前ですが広告費用がかかるため、その費用をどこかでマネタイズできていないと、無限にお金を投下することになるので、それが困難なプロダクトは衰退していきます。
バケツの穴を塞ぐ
プロダクトというバケツに穴があいてしまっているとせっかく新規ユーザーを獲得しても、ユーザーをバケツ内に上手くプールさせることができません。そのため、プロダクトチームは素早くバケツの穴を見つけて塞ぐ必要があります。このバケツの穴の塞ぎ方は様々あるので、ここでは大きく取り上げませんが、要するにそれはUXの磨き上げだと思います。しかしながら、注目して欲しいのは、どれだけバケツに開いた穴を修繕したとしてもバケツそのものは大きくなっていないことです。つまり、バケツが許容できる水の総量は規定されたままであり、DAUの天井が高くなってはいないということです。これではどれだけ修繕が上手かったとしても、もともとのバケツの大きさが巨大でない限りは、プロダクトは成長し続けられません。
いくつかバケツの穴を塞ぐための記事を見つけたので貼り付けておきます。
バケツを見かけ上で大きくする
PdMはバケツの穴を塞ぐと同時にバケツが許容できる水の総量を大きくしていくことが求められます。Gunosyがグノシーの後に女性特化でルクラをリリースしたように類似している新規事業を創出させて、会社全体としてのユーザー数を増やしていく戦略もありますが、ここでは取り上げません。
僕の現時点での考えでは、バケツの大きさはプロダクトが解決可能なユーザーの課題によって規定されると考えています。根本的に同じ課題を解決しようとしているならば、いくら機能追加や改善をしたとしてもそれはそもそものバケツを大きくしているのではなく、バケツの穴を塞いでいるだけだと捉えています。
バケツの全体の容量を大きくする方法として二つあると考えています。それぞれ事例を用いて説明したいと思います。
・UXの融合 (SmartNews)
・UXの伸長 (北欧、暮らしの道具店)
まず、UXの融合についてSmartNewsを例に考えます。UXの融合とは一つのプロダクトの中に複数の明確に独立した課題解決を内包している形とします。Yahoo!やLINEのようなプラットフォームとはまた違ったものと考えています。
SmartNewsでは、基本的な時事やエンタメ、IT系のニュースがあるのに加えて、英語記事を読みながら英語が学習できる体験であったりクーポン機能などがあったりと複数のユーザーの課題を解決することができるようになっています。それぞれで一つのアプリケーションとして存在していいレベルの機能が盛り込まれたプロダクトです。
時事やエンタメ、IT系などのニュースはほとんどの人にとって価値ある情報です。それをデフォルトで搭載しているからこそ、例えば英語学習の訴求でSmartNewsをダウンロードしたユーザーがもしも英語学習が続かずに離脱しそうになったとしても、他のニュースやクーポンなどの機能で離脱を防ぐことができていると考えています。バケツで例えると一方のバケツの穴からこぼれそうになった水をもう一方のバケツで受け止めることを可能にしています。図にするとこんな感じです。
しかしながら、なんでも機能を突っ込めば良いというわけでないので、そこはプロダクトとの相性の良さがあります。どのように一つのプロダクトにおける複数の課題解決の相性を探れば良いのかという話は元スマートニュースの西口さんの本が良い参考になると思うので是非ご覧ください。
次に、UXの伸長について「北欧、暮らしの道具店」を例に考えます。北欧、暮らしの道具店は2007年にECとしてスタートしました。その後、2011年からメディア化をしていったようです。その経緯がわかる記事があるので、戦略の部分は参照記事に委託します。
2019年にiOSアプリもリリースされ、さらにプロダクトが成長しているようです。
北欧、暮らしの道具店がECのメディア化で実現したのはUXの伸長だと考えています。それは、ECでモノを買う体験とメディアで買いたいモノに出会う体験がユーザー体験として繋がっていると思うからです。ECのメディア化によって、モノを買う前の買いたいモノを探したいユーザーを一つのプロダクト内に内包することができるようになり、ユーザー数も伸び、コマースにもシナジーが効いてきていると考えています。図で表すとこのような感じです。ユーザーは二つのバケツを行き来し、総体として「北欧、暮らしの道具店」を形成しています。
プロダクトを成長させる
プロダクトの成長に責務を持つPdMはプロダクトを成長させるために、バケツの穴を塞ぐこと、そしてバケツを見かけ上で大きくすることの両軸で考える必要があります。どっちが良いなどではなく、注力するタイミングは違えど、両軸を持つことが大事だと思っています。
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