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赤煉瓦と鳩 -2021年10月10日

建物の窓から外を見ると、そこに赤煉瓦の建物があった。バルコニー部分の柵の上を、鳩が5,6羽歩いている。鳩は他人の建物の上を歩いていても何の悪びれもない。鳩は罪悪感とか焦燥感とかそういう自分が捨てたいものを全部最初から持っていないから、平和で好きだ。平和の象徴って、別にそういう意味ではないと思うけど。

視力がどんどん落ちていて、人の目を真っ直ぐ見ていると疲れてしまう。すぐに逸らしたくなる。昔、6秒ルールっていうのを聞いたことがあって、それによると人は6秒間じっと相手と見つめ合うことで恋に落ちる確率が上がるとかナントカ。6秒間見つめ合える関係の時点でもうそこそこ脈アリでしょ、というツッコミはさて置き。でも自分の目をじっと見つめてくれる人は、貴重な存在だと思う。全然違う親からこの世に生まれてきて、全然違う立場で見つめ合っているってすごく不思議なことに感じる。すみません、恋人との惚気です。最近会ってないなあ、元気してるとは思うのだけど。

今日、「3月のライオン」最新刊を購入しまして。読んだんだけど、自分にとって本当に涙が出るような内容だった。作者さん、私のことを励ましてくれている?肯定してくれている?と思うほど。優しさに溢れるモノローグが多かった。

私思うんだ きっとこんな風にね しつこくて諦められない気持ちを「向いてる」って言うんじゃないかなって -川本ひなた

いやー、美術をずっとやってきた身としては、本当にこみ上げてくるものがある。画塾でも全然自分は上手い方だと思えないし、本当にこれで正解なのか?と日々に疑心暗鬼になりながらもでも毎週通って。デッサンが終わって家に帰ってきてからも、頭の中から鉛筆で紙を擦る耳鳴りが頭の中で鳴り止まなくて。高校帰りにくたくたになりながら3時間デッサンして。土日は6時間やって。あの頃は、先が見えないながらも足元を照らす光を愚直に信じていた。がむしゃら、と言う言葉が一番しっくりくる。ゴールどころか、少し先のコースすら見えていないマラソンをひたすらに走った。崩れそうな足元の道に怯えては少しずつ前に進むことだけを考え、夢中だった。酷い金縛りに悩んでいたのもこの頃か。

その先に何があったのか。実は、まだ道半ばなのだ。当時の私に言ったら、きっと呆れちゃうだろう。まだかよ。5年経ってるんだぞと。ごめん、少なくとも後3年は続くし、自分の意思によってはもっとかもしれない。デッサンはカタツムリレベルのスピードだけど上達しているよ。今の私のデッサンを見せたいわ。腰抜かすよ、あの時はどれだけ頑張ってもできなかった表現を手に入れつつある。

あまりにもしつこくて、諦めきれなくて、もうなんだかんだ中学で美術科に入学してから8年(!?)芸術の道を進んでいる。もっと他に絵描くよりずっと得意で体力使わない道があっただろうに。未だに周りと比べてモヤモヤすることもあるけど、これは「向いてる」ってことでいいんだね?だって、どうしても嫌いになれないんだから。下手くそでも、時間がかかっても、体力使っても、その先に何があるか分からなくても、今までずっと自分の人生の真ん中には一本の道が通っている。未だに先は見えないけど、走ってきた道は真っ直ぐに見えるから、きっとこの先も真っ直ぐにこの道は続くのだろうと思う。

鳩にはこんな経験は味わえないと思う。鳩、お前は自由に飛べる代わりに、人生の併走者がいないでしょう。

茫然とただ闇にぶつかり続ける僕に 君が「逃げない」と言う 「一緒に考えよう」と言う かわりばんこに はげまし合いながら 歩いて行こうと言う 
どこへでも行ける切符は 「どこかに行ってしまいたかった僕」を道連れに消え この手には 一緒にどこまでも歩いて行ける 少し冷たい君の手が残った    -桐山零

きっと、がむしゃらに戦い続けた先にはあるものは形通りの結果じゃなくて、心強い併走者を連れた自分なのだろう。

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