私を知らない私に宛てた備忘録
私を知らない私へ
記憶を失った時に、真っ先に読むべきメモを書きました。
住所とか、家族構成とか、どこの会社に勤めているとかは、きっと優しい誰かが教えてくれるだろうから
ここには私がどんな人間だとか、好きな場所とか、音楽とか、そういったことを残しておきます。気が向いたら読んでください。
<私を知らない私に宛てた備忘録>
私は、人と関わるのが好きだ。
人からの誘いは、必ず一度は受けることを心掛けている。初対面の人とも何かきっかけがあれば積極的に会話をするし、学生時代の友人とも月に数回は顔を合わせる間柄だ。
かといって私は、クラブへ行ってノリノリになれるほど陽気な人間ではない。人と話すのは好きだけど、お酒が弱く飲みの場が苦手だからだ。乾杯の時に飲むビールは未だにちょっと苦い。
そんな私ではあるけれど、最近、勇気を出して一人でバーに行った。都内のバーを沢山調べて、一人でも入りやすそうなお店を見つけたのだ。行く前は、お酒の種類を勉強したり、どんな服装が相応しいかなどを調べた。
その日は一張羅のジャケットを着て行った。お酒の種類は相変わらず分からなかったけど、店主さんが好みを聞いてカクテルを作ってくれた。お酒を心から美味しいと感じたのは初めての経験だった。思わず店主さんの顔を凝視してした。
だから、貴方は無理してお酒を飲まなくていいよ。この世界はお酒が無くても十分楽しめるようにできているし、何より本当に美味しいお酒も東京にはあるから。
私は、一人でどこへでも行ける。
国内の一人旅が好きで、学生時代は青春18きっぷを使って色んな地域へ行った。特に好きなのは中四国。瀬戸内のキラキラ輝いてるあの感じが堪らなく好きだ。この夏が永遠なんじゃないかって思わせてくれる。
一人旅に行く時は、決まってゲストハウスに泊まる。部屋はドミトリーで、お風呂とトイレは共用だけど、ゲストハウスに行くと毎回ほかのお客さんと仲良くなれる。
去年は8歳の女の子と友達になれた。トランプをしたり絵を描いたりした。記念に私の絵も描いてくれた。顔の皺や鼻の形まで詳細に描かかれていて、思わず笑ってしまった。ある時は、7人組のグループ客の中に混ぜてもらった。一緒に料理をして、鍋を囲んで、焚き火をした。お酒を沢山飲んで、色々な話をした。私は酔っ払った人の扱いがあまり得意ではないけれど、その日のお酒の場は凄く楽しかったのを覚えている。
一人旅が好きだと言うと、よく「誰かと感想を共有できなくて寂しくないの?」と聞かれることがある。でも実際はそんなことなくて、地域の人が声をかけてくれたり、同じ旅仲間ができたり、いつも以上に人の温かさに気づく事ができる。
旅先で出会った人達とは、もう二度と会えないことがほとんどだ。だからこそ、その人達とその場所で出会って過ごした時間はいつまでも忘れずにいたいと思う。
私は、一人旅が好きだ。
私は、島が好きだ。
前述の一人旅は島へ行くことが多い。辺り一面を海に囲まれて、時間の流れがゆったりとしていて、都会の喧騒とは無縁の世界だ。
これまでに行って特に良かった島を二つ残しておこうと思う。この二つは例え記憶を失ってもまた行って欲しい。
一つ目は豊島っていう香川の離島。アートの島としても有名なんだけど、本当にのどかで素敵なところだった。岡山の宇野港からフェリーで20分ほど。直島も経由するフェリーだから海外の方も沢山いた。
私が訪れた日は、たまたま島の夏祭りの日と被っていて、とても賑やかだった。この日だけは島外から島へと戻ってくる人も多いみたいで、色々な人と話すことができた。島の子ども達がお囃子をやっている姿に、まるで地元の子達を見る時のような声援を送った。
海も空もキラキラしていて、眩しいくらいに青かった。夏の豊島、最高に輝いてた。
二つ目は神津島っていう東京の離島。年始に星空を見に行った。きっかけは、辻村深月さんの「この夏の星を見る」という小説。コロナ禍の高校生たちが、リモートで各地域を繋いで星空観察をするお話。小説の中で離島の高校が出てきて、いつか星空を見に島に行きたいな〜と思っていた。神津島は星空保護区という制度に認定された島で、まさにうってつけだった。
神津島へは、竹芝港からフェリーで向かった。夜の10時に出発して、到着するのは翌朝9時頃。船の中は思っていたより揺れたけど、人生初の船旅に胸が高鳴った。早朝に船から見る朝日は眩しくて、冷たい海風すらも心地よかった。
星空は、いうまでもなく圧巻だった。どんな言葉も陳腐に感じてしまうって、こういう景色のことを指すんだろうな。私が住む東京からは見えない星がいくつもあった。
たまたま同じ宿に写真家の方が泊まっていて、星空撮影に同伴させてもらった。深夜の島内を自転車で駆け回った。まさに「星を見るための旅行」だ。
もし、貴方が東京での暮らしに疲れてしまったら、一度島に行こう。時間を気にせず、太陽の光を十分に浴びて、海や山の匂いを全身で感じてみて欲しい。仕事とか生活のことを考えるのはそれからでも遅くないよ。
私は、音楽が好きだ
どこか遠くへ出かける時には、よく音楽を聴いている。
私にとって音楽は、日常に深く溶け込んでいて、尚且つ非日常的な要素も持ち合わせている存在だ。
ライブにもよく行く。上京してからは、月に2.3の頻度でライブハウスへと足を運んでいる。
イヤフォンで聴く日常的な音楽と、ライブハウスで聴く非日常的な音楽の両方が、私の日々を彩っている。
私は、SUNNY CAR WASHというバンドが好きだ。
学生時代に一番聴いたバンドだ。青春のほとんど全てが、彼らの音楽に詰まっている。
しかし残念なことに、数年前に彼らは解散した。解散ライブには行けなかった。彼らの下した決断にとやかく言うつもりなんてないけれど、できることならいつまでも音楽を続けて欲しかった。凄く傲慢だけど、それでもロックバンドには、私だけのヒーローでいて欲しいと思ってしまうのだ。辛い日々から私を掬い上げて欲しい。
私は、リーガルリリーというバンドが好きだ。
20歳になるタイミングで出会った。リッケンバッカーと、東京という曲が特に好きだ。真っ直ぐな音楽で、心にすっと入ってくる。
上京したての1年間は彼女達の音楽に本当に励まされた。私にとってリーガルリリーは、まさに東京での暮らしそのものだ。いつか私が音楽を聴かなくなるその日まで、いつまでも追いかけさせてほしい。
私は、音楽と共に、今を生きている
最後に、私には行きつけのお店が二つある。
お店については、根拠のない自信だけど、貴方ならまたすぐに出会える気がする。お店に行った時に、店主さんが顔を覚えていてくれたら、そこが行きつけだと思って大丈夫。顔を覚えてくれるなんて凄く有難いことだから、いつまでも大切にして欲しい。
私の東京生活での最大の成功は、この二つのお店に出会えたことだと自信を持って言える。それくらい素敵なお店なのだ。
よし、これくらい書いておけばいいかな。
最後に何か締めくくりを、と思ったけど、特に書きたいこともないからここで終わろうと思う。
それじゃ、このメモを実用的に使う機会がないことを祈って、さよなら
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