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白でも黒でもない選択

私には子供がいません。数年前まではそのことに悩んでいたけど今はもうどうってこともなく、子供がいない自由な時間を楽しんでいるところであります。

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(今回は不妊のことに触れますので、そういう話題は苦手…と思う方は読まずにどうぞこのページを閉じてくださいね)

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私たち夫婦はお互い再婚同士なのですが、今の夫との子供が欲しくなったのは私が40歳手前の頃。諸事情により不妊治療はできませんでした。それでも自分にできる範囲のことをやろうと、不妊検査のひとつとしてフーナーテストを受けました。

このフーナーテスト。精子が子宮へ到達しているかどうかそして精子の状態が分かるらしいのですが、私の結果は「精子ゼロ」でした。

結果を聞くために入った婦人科の診察室のあの何とも例えようのない空気と、担当医師の「ここから先はご夫婦の問題です」と言いたげな表情は今でも記憶に残っています(決して担当の先生の態度が悪いという話ではありません)。

考えられる原因はふたつ。だけど夫には前妻との間に子供がいるから原因はひとつに絞られる。この時はじめて、私は夫が子供を持つことに積極的に賛成ではないということに気づいたのです。

今となっては笑い話にもできますが、当時の私にとっては大問題。協力的でない夫を恨めしく思ったり、子供ができない自分を呪ったりの毎日。とにかく地獄でした。大げさに聞こえるかもしれないけれど、子供が欲しいのに妊娠できない女性が持つ自分や周りを責めるエネルギーはものすごく大きい。

自分は女性として欠陥品。母になれないダメ人間。幸せそうな妊婦さんや小さな子供連れの家族を見るのが辛い。女性失格、人間失格、もうどこにも逃げ場はありませんでした。

今になって冷静に考えてみると、「子供が欲しい」という気持ちが強過ぎて、私は周りが全く見えていませんでした。

※これはそういう状態にある(あった)ことを反省しろって話じゃありません。誤解の無きようお願いします。

ただ私は周りが見えず、「夫は子供が欲しくないのかも」という可能性を考えてもみなかったし、そのことで夫とじっくり話し合うこともしませんでした。私が欲しいのだから夫も同じ気持ちだろうと思い込んでいました。夫が言葉にして「子供が欲しい」と言わないのは、私にプレッシャーをかけないようにしているからだ。今から思うとよくそんな風に前向きに捉えたものだと思うのですが、あの頃の私はそう考えて疑いもしませんでした。

そういう態度が夫にプレッシャーをかけいていたのかもしれません。配慮が完全に欠けていました。まあ、それはお互いさまのところもあるけれど。

実は今でも「フーナーテスト精子ゼロ」の真実を夫に聞いてみたくなることがあります。聞かれた夫はきっと居心地の悪い思いをするのでしょうね。本当は聞きたいけど、私は「聞かない」という選択をしました。答えがどちらであったにせよ3日間位は悩んでしまいそうだから。

性格的には私は白黒ハッキリつけたいのです。本心ではこの疑問に対する正解が知りたいのです。「真実はいつもひとつ!」とコナン君ばりに叫びたいのです。だけどこの件についてそれはしない。

白でも黒でもない「グレー」という曖昧な決断ができるようになるとは我ながら大人になったものだと思います。それが正解かどうか、は永遠に分からないのでしょうけれど。


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