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たましいの重さ

夕方、ベランダでセミがひっくり返っていた。まだ息はある。

何かできることはないかと思ったけれど、愚かな人間の分際で自然の摂理に手を出すのはやめようと、ただ見守ることにした。マンションのベランダで土もなくかわいそうだけれど、どこからか鳥が来てくわえていくかもしれない。

ひと晩が過ぎ、早朝に見るとまだそこにいる。息もある。日差しが強くなってきた頃、様子を見ると六方向にひらいていた足が中央にまとまってきている。とうとうこの世での生を終えたらしい。生まれてきてくれて、生きてくれてありがとうと心の中で手を合わせる。

その瞬間、どこからともなくベランダに風が吹き込んできた。今まで同じ方向を向いていた蝉の身体がコンパスの針のように向きを変えた。

ああ、これが魂の重さかと思った。魂がまだ身体にある時は風にも耐えていた。それが身体から魂が抜けた瞬間、思う以上に軽くなるのだ。水分が一瞬ですべて抜けてカラカラに乾いてしまったようにさえ見える。

魂の重さ。

人間も魂が抜けると同じようになるのだろうか。私もこの世を去るときにはこの蝉のように潔く逝きたいものだと思った夏のまだ風が涼しい朝。

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